沖縄の人は、なんと親切なのでしょう
 7月4日から6日まで北海道でした。北海道のことばの教室の先生の研究会と親の会が共催しての吃音の研修会です。それについては、くわしく報告しますが、一日おいて次は、沖縄の言語聴覚士の専門学校で吃音の講義をすることになっていました。ところが、大型の台風が沖縄に直撃するので、飛行機が欠航になり、結局7月15日に延期となったのです。

 昨日は朝から90分が4コマの講義でした。この様子もできたら報告しますが、今回は、生まれて初めての経験を紹介します。

 沖縄には、夕方入りました。何回か行っている沖縄の自然派のバイキングの店で食事をし、食後の散歩に国際通りをぶらぶら。そして翌日。昨日のことです。ホテルから、沖縄リハビリテーションカレッジにはタクシーで、車が混んでいたら、40分はかかります。9時から講義なので、8時にホテル前のタクシーに乗りました。

 運転手さんは僕より2歳年上の72歳。よくおしゃべりをするひとでした。年齢が近いこともあって、同じ時代を過ごした仲間意識が強く働いたのか、4人の子どもの子育て、京都の大学に娘を行かせるのが大変だったなど、夫婦のことやら、いっぱい、運転もそっちのけで、手振りも交えてのはなしなので、ちょっと運転がおろそかになっていないか、心配になるほどでした。僕は、普段から人の話をよく聞く方なので、気持ちがよかったのでしょう。一方的な聞き役ですが、僕にとっても楽しい時間でした。人の人生の語り、物語を、それも肯定的な物語を聞くのはいいものです。混んでいなくてあっという間に、専門学校についてしまいました。

 「講義は9時からで、まだ教官も来ていないだろうし、どこかで時間つぶしををしなきゃ」とふとつぶやくと、近くに海岸ががありますから、そこで、少し時間をつぶしたらどうですか、ここで。メーターは倒しますから、朝の海は気持ちがいいですよと、近くの、砂浜も、水もきれいな海岸の突堤までつれていってくれました。コーヒーを飲みましょうと、缶コーヒーを近くにあった店に買いに行きました。無糖の缶コーヒーを買ってくれました。突堤で、コーヒーを飲みながら、また少し、こんどは沖縄の基地のこと、農業政策のことなど話してくれました。

 タクシーのメーターを倒して、サービスでドライブしたのも初めてですし、安いものとはいえ、コーヒーをおごってもらったのも初めてです。最初で、最後の経験でしょう。そして、ちょうど良い時間に学校まで運んでくださったのです。沖縄の人は、本当に親切です。

 2年前、始めてこの専門学校に呼んでいただき、ぼくにとっては初めての沖縄だったので、講義が終わった翌日一日を、個人タクシーをお願いし、沖縄の基地や、ひめゆりの塔など廻って下さった、タクシーの運転手さんも、長い時間、とても経験できないところまで案内して下さり、予定をかなりオーバーして、サービスしていただきましたが、また、今回もいい人に出会いました。 めったにない経験がうれしかったので。

日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2014/07/16