どもって、声が出ないときの対処
・サバイバル「はい元気です」の「はい」をとる
・言い換えは 言葉の魔術師 得意技
・好きだよと 言えずに言った アイラブユー
・積み木みたいに 言葉を崩し 組み立て話す どもり名人
『学習・どもりカルタ』(日本吃音臨床研究会) (送料込み 1200円)
大阪吃音教室から生まれた「どもりカルタ」は、千葉市のことばの教室など、全国へと広がり、多くの読み札が集まりました。それを選んで「どもりカルタ」ができ、すでに、1300セットが売れ、全国のことばの教室などで使われています。44枚の読み札の中にさきほどの4つの読み札があります。
近視の人のメガネのように、どもる人は、自然にことばの言い換えや、どもりそうなことばの前に、言いやすいことばをつけいます。アメリカの言語病理学者の中には、吃音に向き合うために、言い換えはすべきではないと言う人が少なくありません。どもる人本人も言い換えをすることに罪悪感をもっているようです。
しかし、僕たちの大阪吃音教室では、吃音は治らないとあきらめ、吃音を肯定的にとらえている人ほど、言い換えすることを肯定し、罪悪感はありません。得意技といったり、どもり名人といっています。治らないと認めて、実際の仕事や生活場面で声が出ないとき、最終的にはどもる覚悟はしているから、目の前の人に向き合い、ことばを伝えるために、様々な術を使うことができます。
「焼き肉定食」を注文するとき、「アキニクテイショク」も、メニューを指さした「これ」もいい。接客業で、「ありがとうございます」の「あ」が出なければ、「りがとうございます」で十分伝わります。一音一音をきちんと言おうとせず、前に何か言いやすい音やことばをつけてもいい。以前の東京ワークショップでも、「はい、亀戸支店です」が言えない時、「アメイド支店」でも、「メイド支店」でも相手は「亀戸支店」に電話しているのですから。そう聞き取ってくれます。
また、日本語ほど文法にしばりが少ない言語はありません。「私は あなたが 好きです」なら、「あなたが 好きです 私は」でも「好きです 私は あなたを」でもいい。主語を抜いても、入れてもいい。日本語は語彙が豊富です。言いにくい時は、ことばを言い換えてもいい。言いにくい音で始まるときは、言いやすい音を入れてもいい。どんな手をつかっても、相手に向き合い、相手に伝えていく。人間関係から逃げないことが大事だと思います。
近視の人にメガネがあるように、どもる僕たちには、「言い換える」という「メガネ」のようなものがあると、僕たちは考えています。
日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2014/06/19