自己紹介が苦手

 このブログで、この4月消防士になった青年を紹介しました。小学5年生ごろからつきあいの彼が、1年間の消防学校の生活に耐えられたことで、「吃音とのつきあい」は一朝一夕にできるものではないとも思えました。
 「そんなに、どもってて、市民の生活を守れるのか」
 消防学校の教官のこのことばは、かなり強烈です。それでも自分のしたかった仕事だとの思い、どもりながらがんばるとの覚悟、そして、僕たち大阪スタタリングプロジェクトの仲間の強い支え、これらがなければ、とてもつらかった日々だと思います。いろんな人から、あのブログへのレスポンスをもらっうと、彼はよくがんばれたなあと改めて思います。

 10日ほど前、関東地方の消防署に勤めて10年以上がたつという人から電話がありました。彼の記事を読んで、共感して、勇気が出てきたと電話をしてくれたのです。やはり、消防学校での苦労は同じようなものだったと話してくれました。10以上消防署に勤めて、仕事はそれなりに出来ているのですが、今でも困るのは自己紹介だと言います。

 「先日も、新年度で私のつとめる消防署に新人が配属されてきました。その時には自己紹介をしなければならないのですが、やはり、どもってなかなか声がでなかった。周りからは一瞬のことかもしれないが、自分には長い時間のように感じられる。消防学校での苦労を耐えてきたのに、このようなことで、未だに悩むことがある」

 その人は、僕たちのような仲間がいない中で、ひとりで消防学校の1年を過ごしてきたわけですから、それだけでも敬意の気持ちがわいてきます。僕の本を何冊か読んで下さっていたので、電話をくださったのでしょう。僕の本も、つらかった時代を、ほんの少しでも支えていたのかもしれないと思うと、とてもうれしくなりました。
 僕の考えをよく知っているのだから、早く、自己紹介でも「どもる覚悟」が出来ればいいのになあと話しました。日常の業務が出来ているのですから、自己紹介でどもるくらい、「たいしたことはない」と僕には思えるのですが、それがなかなか難しいようです。関東地方で「吃音ワークショップ」をしているので、非番にうまくあわさったら、是非会いたいですねと話して電話を切りました。

 僕のブログを読んで下さる、自分の知り合いだけでなく、僕が考える以上に多いのだなあと、うれしくなりました。このように、感想を電話をかけてきて下さるのもうれしいことでした。是非、会いたいなあと思いました。

 日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2014/05/02