由布院の楽しい日々
12月22日に来て、2013年があと一日。月日の流れの速さを常に感じているものの、由布院に来てからのひの流れの速さにもおどろきます。
吃音の旅の、この一年の回顧を書こうとおもっても、旅先で、まったく資料がありません。その中で記憶に頼って書こうとは考えていますが、今日は由布院での生活を書きます。
由布院厚生年金保養ホームは、文字通り保養の施設です。長期の滞在型で、年末年始だと2週間ほじの人が多く、今は、ほぼ満室です。3食つく食事は、1600キロカロリーに制限され、病院食のようで、糖尿病の僕には、このような施設が一番です。リタイアした人がほとんどで、平均年齢は80歳前後でしょうか。
食事は四人がけのテーブルで、同席する人がどのような人かで、滞在期間の楽しさは倍増します。今年もおもしろい夫婦と同席で、楽しい食事が続いています。
21歳の夏まで、どもりに悩み、人と話せなかった僕。人の話の輪の中に自分からは決して加わらなかった僕が、初めて出会う人と、楽しく話をしている。これは自分でも驚きます。
どもりたくない、ども.くらいなら話すのはやめようとしていた僕が、人との会話を楽しんでする。この違いは何か、それはただ一つです。どもりが治ったわけでも、格段に吃音が軽減したわけて゜もありません。どもる不安や、嫌悪感がなくなっただけです。どもるときはどもるしかない。ただこれだけのことで、こんなに人との会話、対話が変わるとは、吃音に悩んでいたとき、治さなければなにも始まらないと思い詰めていたときには想像もできません。
5年前に同席した国立大学の教授と再会したのはうれしいことでした。今、同席しているのが、民間のテレビ局で、ドキュメンタリーやドラマを演出していた監督で、もうリタイアしている人です。映画好きの僕には、その人が語る、ドラマの演出の話、映画の話がとても興味深く、いつも聞き入っています。僕たちの席はいつも大きな笑い声が絶えず、周りから、ひんしゅくをかっているのではないかとおもうほどです。
先日は、5年前に出会った人と、私たちと近くの、とてもおいしい食事処で食事をしました。これまで、まったく違う世界で生きてきた、年齢も違う人が、一期一会でであい、楽しい会話ができる。
人が、楽しそうに会話を楽しんでいる姿を、うらやましそうに眺めていた、21歳までの僕はもう、どこにもいません。僕が話さなければ、そんな苦悩の時代があったとは誰もおもわないでしょう。
ひとりの友達もなく、孤独で生きた、小学2年生の秋から、21歳の夏までの自分が、ふと、懐かしく、別の人の人生をみるかのように思い出す、不思議な経験をしています。
日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2013/12/30
、