女性はしなやかで強し


 12月15日、那覇市で言語聴覚士会の主催で「吃音講演会」が開かれました。ことばの教室の教育関係者の講演は数多く経験しているのですが、言語聴覚士会に呼ばれて講演は過去2回しかありません。今回で3回目なのですが、それも沖縄です。
 
 落語が好きな僕は、必ず落語のまくらのような話をまずします。今回は沖縄。まず学生時代、「沖縄を返せ」と沖縄返還闘争や、日本一周で当時沖縄へはパスポートが必要で、与論島から沖縄を眺めていたことを話しました。昨年言語聴覚士の専門学校の講義で沖縄に初めて来たとき、嘉手納基地、普天間基地、平和記念館などを一日かけて回ったことなどを話した後、なぜこの講演会が実現したかを話しました。

 昨年千葉で開かれた、第一回臨床家のための吃音講習会に、那覇市の言語聴覚士の専門学校の専任教師である平良和さんが参加し、これまで疑問に思っていたことが解消されたと、僕たちの考えに共感して下さいました。これまで、学生に教えていたこととは違う僕たちの「治療・軽減・改善」ではなく、「吃音と共に豊かに生きる」ことを支援するのが、言語聴覚士の役割だと考えて下さいました。そして、僕を昨年と今年と、自分の講義の枠の4コマを僕に専門学校で話すようにと招いてくださったのです。さらに、今回他の言語聴覚士にもこの考えを知ってもらいたいと、言語聴覚士会と相談して、講演会が実現しました。

 簡単な経過はこうですが、これは実は大変に勇気のある行動だと思います。アメリカ言語病理学を中心に、話してきたこれまでの「吃音」とまったく違う「吃音」を学生に話せば、「これまで、平良先生の話してきたことは何だったのか」と学生から批判する人はいるかもしれません。それをこれまでの誤りとはいわないものの、こまでとは違うことを話す自分の考えを表明する。男性ならこんな潔いことはできないだろあなあと考えてしまいます。

 同じようなことは昨年ありました。カナダの大学院で言語病理学を学び、カナダで言語聴覚士の資格をとり、大きな病院で3年間言語聴覚士として働いた経験をもつ、池上久美子さんも、「私が長年学んできた、アメリカやカナダの言語病理学の全ては否定したくないが、これまでアメリカやカナダの吃音の取り組みが正しいと信じてきたことを、大きく転換し、僕たちに、北米の吃音事情を語って下さいました。

 池上さんも、長年カナダで学び、信じて疑わなかった「吃音臨床」から、「吃音と共に生きる」の僕たちの考えへと変わったことを、正直に伝えて下さいました。

 女性は誠実でしなやかで強いと、私は強い尊敬の念をもちました。明日は、講演会の様子をお伝えします。

 日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2013/12/17 

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