子どもは、将来の仕事について考えている
第5回・群馬キャンプの初日の夜は、高学年の子どもと僕とが話し合う時間です。
今年は例年よりは参加者が少なくて、高学年の5年生、6年生、高校生、大学生と、すくなかっただけに密度の濃い話し合いになりました。いろんな話題があったのですが、就職について報告します。
大学3年生が就職試験について僕とはなしたくて、子どもの話し合いに参加しました。この大学生の就職活動についての話は、小学生や、高校生にも大きな意味をもちました。
どもる人なら、多くの人が困難に感じる面接試験。その不安を大学生が話してくれたので、こりはいい機会だとこの事柄を話し合うことにしました。
まず、面接試験の自己紹介の意味についてです。吃音を含めて、等身大の自分を提示するのが面接です。「面接が成功したとはねどういうことか?」まず尋ねました。多くの人が、どもらずに面接が無事終えたことと、これまで尋ねた中では多い答えでした。これは違います。どもる僕たちの面接がうまくいったったとは、「どもって、自分をちゃんと表現できたこと」のはずです。たまたま、どもらずに面接が通過したとして、就職できて後が大変です。どもりをかくして就職した場合、「いつ、どもることがみんなに知られるか」不安になります。どもらないように、一所懸命になることは、行動を制限します。「わざと、どもる必要はないが、自然に、どもる時はどもろうよ」「どもらないようにとばかり考えていると言いたいこともいえないよ」。僕が大学3年生と話す話をみんな真剣に聞いています。
どもる自分をそのまま出して、それで採用されるところに就職すればいい。とても単純な話です。自分を良く見せよう、どもらない自分を装う。こう考えると面接で緊張するのは当たり前です。どもる受験生を、相手はどんな態度を見せるか、面接官の人となりを、君が面接するつもりで望めばいい。僕がであった、いろんな人の就職試験の経験を話しました。たくさんの人の人生を知っているのが僕の強みです。大学生はとても納得してくれたように、僕には思えましたので、小学5年生、6年生に、将来どんな仕事に就きたいと考えているか聞きました。
二人とも、具体的ななりたい仕事をもっていました。ひとりは具体的に言ったのですが、ひとりは、具体的な名前は言いたくないと言いました。そこで「その仕事は、特別な才能を必要とすることなのか、努力すれば手が届く仕事なのか」と聞きました。すると、その子は「努力すれば就けると思う」といいました。
素敵ですね。僕なんか21歳の頃、「どもりが治らないと仕事ができない」と本当に思っていましたので、小学生が、将来はともかく、今現在そのように考えていることに、尊敬の気持ちがわいてきました。
吃音に悩み、強い劣等感をもち、僕のように「吃音を治す、軽減する、改善する」と思っていたら、吃音は大きなマイナスになりりますが、治らないと認めて、自分の人生を考えると、可能性は大きく広がれます。「どもりを治す努力は無駄になるから、そんな努力はしないで、自分がどんな仕事に就きたいかを考え、その必要な努力をしようと、みんなで確認しました。
大学生が公務員になりたいと言ったので、今は面接の心配をするより、公務員試験に合格するように、学科試験で合格するように、勉強を一所懸命しようよと言う話からです。
小学生と、こんな話し合いが出来たのはうれしいことでした。子どもたちも話し合いの最後の感想に、元気が出たと言ってくれました。僕の体験が、少しは人の役に立てたと思える、とてもうれしい瞬間です。
どもる人は、どもらない人より、苦労は確かにあると思います。だからこそ、他の子どもよりも早めに、この社会でいろんな仕事があること、華やかな仕事もあるが、地道な仕事でがんばっている人のことなどを知ったり、実際の仕事ぶりを見たり、親子で早めに話し合って欲しいと思います。
仕事についての本も出回り始めました。早めの対策が必要だし、子どもは大人が真剣に仕事の話をすれば、つきあってくれると、群馬のキャンプで強く思ったのでした。
次回は、どもる子どもの保護者との話し合いについて報告します。
日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2013/12/05
戸力を時の等