脳検診
由布院厚生年金病院で、脳診断を受けました。保養ホームと病院のタイアップ事業で、MRI MRA、コンピューター断層撮影です。糖尿病の私は、脳梗塞などがしんぱいなので、いい機会だと受けました。
15分ほどで撮影が終わり、院長自らがその画像を見せながら、たっぷりと説明してくれました。12月28日の御用納めで外来患者はお昼からはいないせいか、ゆったりと私に向き合って、丁寧に、穏やかに解説をしてくださいます。相手の目を見ながら、穏やかに丁寧に説明されると、患者というある意味弱い立場にいるものとして、こんなに安心、信頼できるのかと、とてもうれしくなりました。
糖尿病は血管の病気です、少しは異変があるのかと不安がありましたが、「この脳は、この年齢からすると、きわめて若いすばらしい脳」だと言っていただきました。びっしりと詰まっているのが画像でわかります。萎縮している部分もまったくなく、血管も問題なく「若い脳」だといっていただいて、とても安心しました。
以前、演出家の竹内敏晴さんが毎月大阪で「からだとことばのレッスン」をしてくださっていました。そのとき、ホテルの浴室で倒れて、頭も打ったので、大騒ぎしたことがありました。病院でたぶん私がしたような脳診断があったのでしょう。そのとき、「年齢にとは思えない若い脳だ」といわれたと言っておられたのを思い出しました。そのとき、何事もなかったのですが、竹内さんの言っておられた「若い脳」とはこういうものかと、画像を見て思いました。
ゆったりとした時間だったので、「私は、どもりで、どもりに取り組んでいるのだけれど、吃音と脳について少しお起きしていいですか」と訪ねました。3歳ごろからどもり、小学2年生から68歳のいままで、どもり続けていますが、何かこれまで見てこられた脳と比べて、異常な部分はありますか」とたずねました。
当然だと思っていましたが、微塵もそのようなものはないとのことでした。その病院はリハビリ専門病院で27名もの言語聴覚士がいる日本有数の病院ですが、脳卒中、交通事故などで脳のダメージを受ければそれは当然、画像にも表れるか吃音の場合はないだろうとのことでした。
どもり続けた私の脳の画像を見て、どもりと脳についてあきらめられずに追求し続けるアメリカ言語病理学に不思議な思いがしました。仮に病変が見つかったとして、吃音と脳の関係が発見されたいと、いわゆる吃音治療にどう生かされるのでしょう。アルツアイマー病などは脳のこのあたりが、こうなると説明していただきましたが、脳で病変がわかったとても、それが病気だと診断されても、その対策はあまりないのですから。
私は、好奇心があり、よくしゃべり、笑います。そして、何よりも吃音に興味関心があり、勉強し続け、吃音について話し、本を書くなどしてきました。吃音で脳に病変がなかったものの、吃音に悩んだおかげで、吃音について深く考え、吃音キャンプなどで、子どもたちとに付き合うことが、私の脳の若さになっていると思うと、吃音さまさまだと思えるのです。
愉快な、脳診断でした。
日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2012/12/28