吃音講習会報告
日本吃音臨床研究会は、毎月「スタタリングナウ」というニュースレターを発行しています。今月号で218号です。毎月よく9続いてきたものだと思います。私は毎号、巻頭言を書くのですが、毎月となると大変です。そろそろ、ネタが尽きるとおもいながらも、他の書き手に助けられて続いています。
今月号のテーマは、今年の夏に開かれた「吃音講習会の報告」です。報告は、どもる子どもの保護者であり、高校の教師でもあり、毎週大阪吃音教室に参加している、坂本英樹さんです。送られてきた原稿を読んで、うなりました。すごいんです。
2日間の吃音講習会は、中身の濃いもので、それを8ページのニュースレターで紹介するのは難しいことです。それを私たちが大切にしていることを、ぎりぎりの紙面制限の中で、表現されています。講習会のテーマはナラティヴアプローチでした。これまでの、吃音のネガティヴなストーリーを、新しい、自分を生きやすくするストーリーに変えていこうというテーマです。
私の基調提案から、発達心理学者の浜田寿美男さんの記念講演と、浜田さんと私の対談を国立特別支援教育総合研究所の牧野泰美さんが司会して下さるという、贅沢なものでした。夜はグループの話し合い。翌日は、ことばの教室の教師、保護者、言語聴覚士、成人の当事者のシンポジウム。昼からは、保護者のための公開吃音相談会。バラエーティーにとんだプログラムでしたが、一貫して流れていたのが、吃音を否定しないこと、どもる人や、どもる子どもには、自分の問題に向き合う力があることの確認でした。
私の著書や論文のすべて読み、スタタリングナウを創刊号から購入して読み、私の主張をよく理解していなければ、また、ナラティヴ・アプローチについて学んでいなければ、また、浜田寿美男さんの著作をよく読んでいなければ、とても書けない、力作でした。
私たちは、これまでとは違う、吃音についての物語を語り、文章にしていかなくてはなりません。その時期に、一年前から坂本さんが私たちの仲間に加わって下さった意味を考えたのでした。
吃音講習会の報告書は、来春、私たちの年報として発刊の予定です。機会がありましたら、是非お読みいただきたいと思います。新しい吃音の臨床の提案になっています。
日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2012/10/16