子どもたちとの話し合い

 キャンプの一日目、夕食が終わってからの90分、年齢別に話し合います。昨年は高校生のグループで人生についていろいろと話しました。特に女子高生が3人仲がよくて、好きな男の子に話しかけられないと話があり、「すごくどもりながら、結婚相手の親に挨拶に行った人が、このキャンプのスタッフでいるよ」と話したら、食事の時高校生の3人が彼女に恋愛相談をしていたのが印象に残っています。
 
 私は今年は、小学5年生、6年生の担当でした。
 まず、自己紹介の時一番最初に話した女の子が、名字はすっと言えたのに、名前がぜんぜん出てきません。かなりの時間でしたが、みんなが、目をそらすことなく、じっと彼女がことばが出るのを待っていました。子どもたちの真っ正面からその子に向き合い、待つ姿が印象的でした。
 でも、あまりまっても彼女もつらいです。時を見計らって「何々さん、名字はすっと言えたのに、名前がなかなか出てこないね。今、どうしたい。このまま僕たちは待ってもいいし、今は出ないから、あとでするかい」と介入しました。彼女は、ほっとした様子で、後にすると言ったので、順番をすすめました。そして、しばらく話し合ってから、もう一度彼女にたずねました。「どうですか、さっき、あなたが一所懸命名前を言おうとしていたのに、僕がストップをかけたのは嫌だった? それともあれでよかった?」と尋ねました。長く待たずに声をかけてもらってよかったと言い、学校でもよくあると言ってくれました。少し暗かった顔が、明るくなり、2日目の話し合いでは、本当にあかるくなっていました。「いい子ですね」とキャンプが終わって変えるとき、お父さんに声をかけました。
 作文でも、びっくりするようなしっかりした考えを書いていました。
 楽しい、笑いにあふれた5年、6年生の話し合いでした。
 記録に書かれていたものの一部を紹介します。

自己紹介・なぜキャンプに来たのか
・行ってもいいなあと思ったら、お母さんが予約してくれた。
・ お母さんの友だちが紹介してくれた。はじめは知らないところへ行くのが不安で少し抵抗していた。今も緊張している。
・話を聞いて楽しそうだったから。
・ 3年のとき来て楽しかったから。
・ ことばの教室の先生の紹介。伊藤伸二の本を読んで会いたくて来た。
・ ことばの教室の先生の紹介。5年のとき参加して楽しかったから。
・ ことばの教室の先生の紹介。来たいと思った。
・ 名前の「あおい」が言いにくいから来た
・ 静岡のキャンプにも行ったことがあるので来た。

○学校でのエピソード
・ どもると笑ってくる子がいた。帰りの会で、自分がどもることを伝えた。先生も少し付け加えてくれた。その後も同じ子が笑ってきたとき、先生が「別に変なことじゃないよ」って言えばいいじゃんと励ましてくれた。
・ 緊張するとどもるけれど、周りはあまり反応しない。
・ 友だちが聞き流す。聞き流してくれる。前に、「なんでそんな話し方、するの」と、授業の音読中に友だちに言われてショックで休んだ。そのとき、先生がクラスのみんなに言ってくれた。その後、クラスの様子が変わった。
・ 去年、僕も同じことがあった。
・ 年下の子たち3、4人や他の学年の子たちにも言われて嫌だった。逃げることもあったけど、逃げられずに泣いた。家に帰ってお母さんに相談した。ことばの教室の先生が担任に伝えてくれて、クラスの総合の時間にどもりについて話してくれた。同学年の子にはもう言われなくなったが、年下の子に言われると、やっぱり逃げる。
・ 発表のとき、どもって声が出なくなってせかされた。次の日、お母さんが、伊藤さんの書いた「どもる君へ 今伝えたいこと」を買って、クラスにもっていったら、先生が話してくれた。
・ 小4のときの先生は、クラスのみんなに何もしてくれなかった。一緒に言ってくれたりしたけど、先生が説明してくれたらよかった。お母さんと一緒に頼みに行ったが、あまり理解してくれなかった。
・ 他の子がクラスでどもりのことを伝えた話を聞いて発表しようと思った。そしたらスッキリした。4年生のころは、どう行ったらよいか分からなかった。みんなの反応が恐かった。でもやってみたら全然平気だった。
・ 小学校1年生のときから、「なんでどもるの?」と聞かれて「僕のくせだよ」と行っていたら、周りの人も理解してくれた。
・ 全校の発表のとき、つっかえて嫌な思いをした。周りのこからは何も言われなかったが。周りの子は受け流している。
・ 友だちは少ないけれど、話を最後まで聞いてくれる友達がいる。長くなると、とちゅうでそっぽ向く人も多いが。担任の先生は理解している。どもっても、最後まで目をそらさずに聞いてほしい。
・ どもっていたら、お手伝いしてほしい。最後まで聞いてほしいときもある。

○中学校について
  発表の機会が増えるのではと不安。
  他の小学校から来た子に説明。
○どもったときの対処法  田中実
  あかさ、たなかみのる とリズムに合わせて一気に言うる
  みのる たなか
  マイクの調子が悪いふり
  前もってみんなに話しておく。
  他の人に助けてもらおう。

 日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2012/09/24