夕食後は、キャンプの一番の柱、吃音についての話し合いです。23年のキャンプの歴史の中で、プログラムの中でもっとも大事にしてきたのがこの話し合いです。残念ながらグループに分かれますので、他のグループのことはわかりません。私のグループにかぎっても、これまでたくさんのドラマがありました。今年は小学5年生、6年生のグループを担当しました。このグループ分けが難しいのです。基本的には同学年の子どもですが、その年によって同じ学年の子どもが10名もいたりする年もあれば、どうしても、違う学年と一緒にしなければならない年もあります。中学3年生と高校生というグループもありました。どのグループにどのスタッフを入れるかも、毎年迷います。ことばの教室の教師と成人のどもる人を基本にして3名。どのような話し合いがあったかは後日報告します。

 90分の話し合いの後、2日間で仕上げていく劇の見本の上演です。7月合宿で稽古をし、8月にも復習しますがなかなか動きが難しい。夕食前、早めに切り上げた夕食後に通し稽古で本番に備えます。私たちスタッフの出来具合で,子どもたちの劇への、役への興味が違ってきます。自分の演じた役を子どもたちが興味を持ってくれるか、多少のライバル意識が働きます。子どもたち同様、スタッフにも、劇の主役は初めてだという人もいます。かなりどもりながら自ら主役を希望して、演じる人もいます。それがとてもいいのです。劇をスムースに進行するなら、どもらない、ことばの教室の教師や、言語聴覚士がセリフの多い役をするでしょう。そうではないところが、私たちの劇の特徴です。どもりながら、真剣に取り組み、どもっても最後まで言い切る、どもる大人の姿を見てほしいのです。

 劇の上演は、さすがに観衆が多い緊張する場面だとできるものです。稽古以上のできばえでした。「コニマーラのロバ」はストーリーがわかりやすく、いじめっ子と守る側の子どもの対立など、学校生活の中で起こりえるシーンもあって、子どもたちもみんな真剣に見つめています。大成功でした。

 長い一日のしめくくりは、スタッフ会議です。これまでの動きの報告と、検討、明日の流れの確認です。実行委員会も何も開いたことがない。その日はじめて合うスタッフが、ほとんど話し合いもない中で、150名近くの集団の動きがスムーズ流れていく。毎年不思議に思います。チームワークのよさ、伝統なのでしょう。初めて参加のスタッフは、最初とまどいながらも、ベテランの動きに見よう見まねでついていく。いちいち説明して、教える時間はないのです。動きながら、動きをつかんでいくしかありません。
 
 各グループでどのような話し合いがなされたか、どのような子どもが、どのような発言があったか、気になる子どもだけ、気になる親のことは丁寧に報告されていきます。他ののグループの様子を知ることができる唯一の機会です。ユーモア、やじや、大阪特有のツッコミが入り、常に笑いにあふれています。これらの話を聞きながら、ここに集まるスタッフの人間的な温かさをいつも思います。実によく子どもや親を見ています。このいい仲間とスタッフを組んで、キャンプができることの幸せを感じることができるスタッフ会議です。長い一日が終わりました。

 日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2012/09/14

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