吃音を担任教師が理解すれば
 

 岡山のキャンプで、初日のキャンプの夜はいつもは、コンサートのようなことをするのですが、今年は子どもの話し合い、保護者の話し合いがゆったりともたれました。
私にとっては、ゆったりと吃音に関われるとてもよいプログラムでした。

 子どもの話し合いでは、小学6年生、中学3年生、高校3年生が混じっていて、それぞれが人生の大きな転機を迎えて、不安があったようです。私は、小学5年生の中頃から、中学生になっての自己紹介などの不安におびえていました。中学生になるのがとても怖かった。しかし、岡山のキャンプに来ている子どもは、複数回来ている中で、いろんなことを学んでいるためか、話し合いをしてみると、私がかつて経験した大きな不安ではありませんでした。誰もが当然もつ不安で、対処できると子どもたちが考えているものでした。岡山の吃音キャンプの大きな成果だと思いました。

 また、保護者の話し合いもそうです。
 複数回参加している保護者の体験は、初めて参加の親に現実的で具体的なアドバイスはとても役に立っています。ここでも、グループのもつ力を感じました。その中で出てきたのが、通常学級の担任の教師の吃音についての無知、無理解でした。もう少し担任に理解があれば、子どもはもっと楽しく、あまり苦労なく学校へ行けただろうにとの話し合いになったそうです。
 そこで、どう担任に理解してほしいか、翌日の私の担当のグループでの話し合いで出してもらいました。
 このような親の思いが出されました。

     通常学級に望むこと、理解してほしいこと

・「吃音とは」の基本的なことを知ってほしい。
 「・・・・・」と声がでない、プロック(難発)が吃音と思っていない人がいるので、子どもがどもっている状態に気づけない。すぐにことばが出ないと恥ずかしがっているのか、緊張しているのかと思われる。
・発表場面があることを前もって言ってほしい。
 どのように発表するか、事前に子どもに相談してほしい。どもる子どもは一様に発表は嫌だろう、苦手だろうと決めつけないでほしい。
・からかいがあったら、素早い対応をしてほしい。
・教員の初任者研修などで吃音を取り上げてほしい。
・吃音は育て方が原因ではないことを知ってほしい。担任だけでなく、身近な人にも知ってほしい。
・原因なく波があるということ、規則性がないことも、知ってほしい。
・学校でどもらないからといって「大丈夫」と軽々しく言わない手ほしい。「前、どもる担任したことがある」というベテラン教師のわりには、ひとりひとり違うことを知らない。
・幼稚園で、子どもの吃音について相談したら、「子どもに知られたら傷つくから小さい声で、子どもに聞こえないようにはなしましょう」と言われた。吃音は意識しない方がいいという神話がある。
・吃音の話を担任にすると、「親が熱心すぎる」と言われる。「家でもプレッシャーを与えているのでは?」と誤解される。
・幼少期のときにどこかに相談に行くと、「大丈夫」と安易に言われる。真剣に聞いてもらえない。
・いじめ、からかいの芽を早く摘んでほしい。
・吃音に気づいて相談したら、自分の学校にことばの教室があるにも関わらず、ことばの教室を紹介されずに、カウンセリングを紹介された。ことばの教室は、親勧めにくいと言われた。まずは、通常学級の担任が、通級指導教室やことばの教室を知ってほしい。

日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2012/09/02