吃音キャンプとアホな人たち
     

 「アホな人たち」
 自分の仕事上の立場や損得を超え、自分の気持ちに正直に、本音で何事かに一所懸命取り組む人。それが結果として人の役に立っているのを自分のことのように喜ぶ人。大阪では、というより私たちだけかもしれませんが、親しみと共感、尊敬を込めて、私たちはこう呼び合っています。

 ことばの教室の教師は、本来、自分の教室に通ってくる子どもを、その時間真剣に指導すれば、それで誠実に仕事をしていることになります。吃音の、いわゆる吃音の症状だけの改善を目指す教師であれば、言語指導が役割だと考える人なら、ことばの教室だけの指導で終わることが多いでしょう。

 しかし、吃音を生き方の問題だと考えると、活動は教室だけの枠では収まりません。小学校を卒業してからもずっとつきあっている人がいます。どもる子どもに会わせたいと考え、定期的にどもる子どもの集まりを続ける人がいます。それらは勤務時間外ですが、嬉々として子どもたちのために、企画し運営する人がいます。

 私のかかわる吃音キャンプは、毎年5月か6月の島根スタタリングフォーラムから始まり、岡山、静岡、群馬とつづくのですが、8月11・12日には、岡山で第10回目のキャンプがありました。
 記念すべき10回めでした。キャンプが始まったとき、はたしてどれくらい続けられるか話題になりました。3年は続けたいのことば通り、最初に企画した人は3年続けました。しかし、教育委員会への転出などで、企画ができなくなると、すぐに、私が継続すると手を上げて下さった人がいました。そして、その中心人物の一人も、教育委員会に転出すると、新たに新しい人が加わりました。10年ずっと関わって下さる人がいるから、中心人物が変わっても継続ができるのでしょう。継続することはとても大変なことにのです。

 「アホな人」でなければ、こんな大変なことはできないのです。しかし、「アホな人」は、周りが考えるほど、大変なことではないのです。だから続くのだと思います。とにかく10年続いたことがうれしくて、スタッフの皆さんに心からの敬意を表しているのです。また、10年も続けて私を講師として呼んで下さることに感謝しているのです。

 今年は、キャンプの前の午前中に私の講演会を企画して下さいました。キャンプのスタッフだけでなく、岡山県のことばの教室の先生が、私の講義だけを聴きに来て下さいました。できるだけ多くの人に私の話を聞いていただきたいと考えていますので、大変にありがたいことでした。
 キャンプの内容については、次回に。
 
日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2012/09/01

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