奥村さんの発表はすばらしかった。

 8月3日、私たちの仲間である、吃音を生きる子どもに同行する会の奥村寿英さんが、吃音の分科会で実践を発表します。
 山口大会で佐々木和子さん、長野大会で高木浩明さん、北海道大会で渡邉美穂さんと続いてきた流れです。私たちの主張は、全く変わりません。どもる子どもの幸せを考えた取り組みの紹介です。
 「吃音ワークブク」作成のとき、何度も合宿したメンバーの一人である奥村さんは、学習・どもりカルタや吃音ワークブックを使っての実践を、子どもの生の声を届けながら話していきました。
 高木さんのときもそうでしたが、発表のときや質問に答えるとき、主語が「ぼくらは、…」となるのが、なぜかおかしかったです。全国に仲間がいるという安心感からつい出ることばなのだろうと思いました。
 発表の後、参加者からの質問があり、さらに、この分科会のコーディネーターの小林宏明さんから、討議の柱について説明がされました。そして、参加者とのやりとりが続きました。いくつか印象に残った話を。

◇今まで、吃音には腫れ物にさわるような気持ちで接してきた。幼稚園でいじめられてきた経験があると聞いているので、よけい触れることが難しい。どう対応すればいいのだろうか。
◇担当している小1の子どもは、苦しそうだけど、自分のことばには気づいていないみたい。そんな子どもに担当者から、「そういうしゃべり方は、吃音といって…」などと言っていいのか、迷っている。
◇担当しているのは、小6。「ゆっくり言えばどもらないよ」と伝えたが、ゆっくり読むことに抵抗があるようだ。無理強いをしようとは思わないが、どうしたらいいか。
◇語頭音が出にくく辛そうなので、軟起声を取り入れている。担当者である自分もできるようになろうと練習している。
◇吃音のことを話題にしたいと思うが、「困っていること、ない?」と聞くと、「別に」とはぐらかされてしまう。話題にするのは難しい。
◇吃音の問題は、氷山の水面下の部分が大きいと思うが、どう取り組めばいいか悩んでいる。みんなはどうしているのか。

 担当者の勝手な思い込みで判断しないで、当事者である子どもに聞くということ、どもる子どもに好奇心をもってその子の世界を知ろうとすること、どもる症状ではなく話す内容に注目すること…。一生懸命、誠実にかかわろうとして下さっていることばの教室の担当者はたくさんいます。どもる子どもの幸せを誰もが考えて下さっています。そのことを信じて、当事者の立場からの発信を続けていかなけければいけないと強く思いました。
 「吃音を治す・改善」ではなく、吃音と向き合い、吃音と共に生きる子どもとつきあう実践です。丁寧に説明し、たくさんあった質問にも丁寧に答えていました。    20128月3日記

 日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2012/08/16