大津市で昨年10月、中学2年生がいじめが原因で自殺をしました。学校のひどい対応、教育委員会、警察の無茶苦茶な対応。いまごろになって次々に明かされる真実。怒りを通り越し、むなしさ、絶望がこみ上げてきます。教育関係者なら未だに記憶になまなましい、「葬式ごっこ」。20数年前のいじめによる自殺の再現のようです。
 学校現場は、教育委員会はなぜこうも、いじめと自殺の因果関係を認めようとしないのか、隠蔽を繰り返すのか。それは、日本のリーダーの責任をとらない、くさいものはふたをする隠蔽体質にあります。戦争の責任をとろうともしない、認めようとしない政治屋ら。公害をみとめない、原発の危険性をみとめない、企業。いじめを見ても子どもを守らない教育現場。ことが起こっても責任を回避する教育行政。
 日本には責任をとらない体質が充満しています。
 次に紹介するのは、1994年、日本吃音臨床研究会を設立して、 発行し始めたニュースレター「スタタリングナウ」の第一号の「いじめ特集」の巻頭言です。この巻頭言の後、高校生の生々しいいじめられ体験がかたられるのですが、彼は確かに死んではいませんが、20歳ころ、統合失調症になり、今は引きこもり状態です。彼のいろいろとしたかった人生を、今は生きてはいません。彼の人生を奪ったいじめ。もっと国民ひとりひとりが「いじめは絶対にゆるさない」の決意と、行動をしないと、このような悲劇は今後も繰り返されます。
 「いい加減にしてくれ」と叫ぶ声もむなしく、落ちていきます。

2012年07月12日10時57分31秒0001



いじめは人殺しや
                   日本吃音臨床研究会会長伊藤伸二

 「いじめは人殺しと同じや。僕は本当に何度死のうと思ったか分からへん」
 彼は今、死なずに生きている。しかし、頭痛、胃痛、不眠、目の前のちらっき、等様々な身体症状は消えない。どもりが原因で幼稚園の頃から辛い体験を繰り返した。それでも、どもりでいじめられないようにと、彼はスポーツや勉強に打ち込む。
 そして、ラクビー部でも勉強でも人一倍がんばり、人からも認められ、自信がっく。いい中学校のスタートを切ったかにみえた時、いじめが始まった。いじめられている子供の味方にならなければならない教師が、反対にいじめの側にまわる。教師公認となったいじめは執拗に続き、彼の気力も体力も奪っていった。
 彼に、いじめられ体験を書いてくれるよう頼んだ時、この問題に決着をっけるためにも書きたいと言った。しかし、書き始めると、なかなか書けない。書くことで、辛く、嫌だった過去を思い出すからだ。思い出しては眠れない日が続く。
 「書こうとするけれど、書けません。聞いてもらえれば、話せると思います」
 伝えてあった原稿締め切り日の数日前に、彼から電話があった。
 私と向かい合い、マイクを前にして、彼は2時間近く話してくれた。その生々しい、いじめの実態に耳を傾け、怒りと、腹立たしさに、私のからだは震えた。
 彼は、昨夏の吃音親子ふれあいスクールに参加し、程度は違っても、どもりのために、からかいやいじめを体験している同年代の子供たちと出会った。また、かつてどもりに悩んだ経験をもち、現在は吃りながらも、教師やスピーチセラピストとして働く吃音の先輩と出会った。同じ悩みを持つ子供、先輩との出会いの中で、自分自身を見つめた彼は、少しずっ元気が出始める。そして、高校を卒業したら、大学では教育か心理の方面に進みたいとの意欲をもち始めた。
 しかし、意欲はあっても、あまりにも体が弱っていた。何度も病院で検査を受ける。検査の数値上では異常はないが、頭痛、胃痛その他のからだの変調は相変わらず彼を苦しめる。通っていた高校で、彼に対するいじめがあるわけではないが、からだがっいていかない。このまま、高校を卒業するまで、からだと気持ちをなんとかだましながら頑張れるだろうか? 彼は悩んだ。いろいろと話し合う中で、無理をして、からだに逆らってまで、学校にこだわる必要はないとの結論になり、彼は退学を決意する。
 大学に行きたいとの気持ちが堅かったため、自分のペースで学べ、大学受験の資格も得られる、通信制の高校に入学し直す事を考えた。両親も納得し、高校に退学届けを出した。その後、彼は高校に合格し、新しい道を歩み始めている。
 幼稚園の教師から、中学校の教師まで、彼は随分ひどい教師に受け持たれている。小学校1・2年の時の教師だけが彼を理解し、その時の彼は生き生きし、吃ることへの悩みもなかったと言う。
 子供のころに教師から受ける影響は絶大だ。
 彼の小学校の教師の場合、どもりに対する、無知、無理解というより、教師そのものの適性が問われるべきだと言いたい。中学の暴力教師は、「僕は、子供のために指導しているんだ。子供から嫌われる教師を目指す」とうそぶき、体罰教師として、反省することなく、教師の仕事を続けている。
 このような、体罰で子供を押さえつける教師がカを持つ学校は、学校そのものが、いじめを生み出す。暴力教師はもう、犯罪者だといえよう。
 彼のような暴力教師がいるかぎり、犠牲者は後を絶たない。この特集は怒りの告発でもある。

 日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2012/07/12