ふるさとは、今日も温かかった
島根は私の心のふるさとのひとつです。21歳の時の初恋の人が島根の人でした。その人が住んでいた三瓶山の麓に国立青年自然の家があります。第一回のフォーラムがこの会場で、34年ぶりの再会をさせてくれた、思い出の場所でもありました。島根に入る前日の金曜日、午後4時に広島駅に、実行委員長の佐々本茂さんが迎えに来てくれます。広島から島根県の宿泊先浜田市までの車の中で、あれこれと話すのも私の楽しみのひとつです。島根県のことばの教室の現状、支援教育の現状、今、あの人はどうしているのか、転勤先はなど、何か、本当に生まれ故郷に帰ったような感慨にいつもなるのです。「吃音を治す・改善する」ことが、ことばの教室の役割だと考えることばの教室がある中で、島根のことばの教室の先生たちは、そうじゃありません。私が行くようになった以前から、島根には大石益男という、伝説的な人がいて、今の島根の特別支援教育や育児について、私に近い考えの実践をしています。35年以上も前に、私が大阪教育大学の教員の時代、全国吃音巡回相談会で松江市に行ったとき、当事松江市のことばの教室の担当者が大石さんでした。それからのつきあいなので、ずいぶんと長いものです。
安心して、自分の考えや思いを、思い切り話すことができ、それを受け止めてくれる。それが島根のひとたちなのです。それでなのかしれません。車の中で私は自分がすごくどもっているのに気づきます。普段より、ずっとどもって、話しにくいのです。これも、ふるさとに帰った気になるひとつなのかもしれません。
明日から、14年連続して参加させていただいている。島根の吃音親子キャンプ「島根スタタリングフォーラム」が始まる。ホテルは浜田市の繁華街、駅の近くです。夜、40分ほどホテルの周りを散歩すると、第一回のフォーラムがよみがえってきます。それが、今も続いていることがたまらなくうれしいのです。
日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2012/06/19