うれしくありがたい時間
かつて、専任講師として勤務していた、古巣の大阪教育大学へ、いまでもずっと非常勤講師として講義に行っています。昨日、4日間の大阪教育大学、特別支援教育専攻科の集中講義が終わりました。4日間といっても、今回は、初日が台風のために休講で、時間を延長して、3日で4日分の講義を行いました。
学生といっても、内地留学の、特別支援学級や、ことばの教室の現職のベテラン教員です。私の講義スタイルは、いつも、スクール形式ではなく、コの字型の座席で、全員の顔が見えるようにして、ひとりずつと対話しながら話します。私が一方的に話すことはしません。
『親、教師、言語聴覚士が使える 吃音ワークブック』(解放出版社)を教科書として使いますので、話したいことは、学生の手元にあります。なので、安心して脱線しながら、学生と対話をしながら、話が進んでいきます。質問に答え、提案し、また質問に答える。このような講義スタイルしか、私はできません。
今年も、学生のみなさんは本当に真剣に考え、私からの質問にもしっかりレスポンスして下さいました。真剣な時間が、あっという間に過ぎていきます。「すみません、おトイレに」と言われて、休憩時間を大幅にオーバーしていたことに気づくこともありました。実際にどもる子どもの指導をしてきた人や、長年、支援学級で子どもたちと真剣に向き合ってきた、ベテランの教師が、自分の教育観、子ども観を、経験してきたことを、本音でぶつけて下さるので、私にとっても、とても刺激的です。
吃音親子サマーキャンプのビデオや、TBSやNHKの私が出演した番組などを見てもらいながら、アメリカの吃音臨床と、私の提唱する「日本の吃音臨床」について、熱く語ります。竹内敏晴さんから、いつも、「伊藤さんは、力強く、熱く語りすぎる」と叱られていたのですが、他のことならともかく、アメリカ言語病理学への批判の話となると、つい、熱くなってしまいます。そんな、暑苦しい私の話を学生はよく聞いて下さいました。毎日、講義の終わりに書いてもらう振り返りを読むと、吃音について、理解が深まっていくのが分かります。
最終日はいつも、プレールームで、竹内敏晴さん直伝の「からだのゆらし」でやすらぎ、「日本語のレッスン」で、歌を歌います。今年は、吃音親子サマーキャンプの親の表現活動で使った詩をみんなで読んでもらいました。工藤直子さんの詩で、からだで表現するというものです。楽しい時間でした。
最後に、「奇跡の人」で知られる、ヘレンケラーとサリバンの教育について話します。ポンプから出る水が手にかかり、「ウォーター」とことばを発見するシーンが、映画や舞台で出てきて、よく知られています。ところが、自伝やサリバンの手紙などを紹介して、あれは真実ではないことを話しますと、みんなはびっくりしますが、納得してくれます。
最後の振り返りで、ひとりずつ3日間の講義の感想を言っていただき、最後のコメントをするのですが、私にとっては、とてもうれしい幸せな時間です。私の考えや提案が深く伝わったと実感できるからです。
・たくさんの仲間がいて、自分を語るものをもっている伊藤さんや、どもる子どもや、どもる人がうらやましい。
・伊藤さんと出会わなければ、吃音の人たちを誤解したまま接していたと思う。
・吃音にとても興味がもてた。伊藤さんの考えが早く世界に広がることを願う。
・教師として、親として、自分をふりかえるいい時間になった。
・吃音だけでなく、コミュニケーション障害の全般的なとらえかたを学んだ。
・人生何事も選択肢があることを、子どもたちに知らせていきたい。
・「どもりを治さなければならない」の考えは、子どもたちの自己否定につながることを肝に銘じたい
・「子どものために」は、「子どものせいだ」になるので、子どもも自分も楽しめる授業や活動をしたい。
・キャンプの映像が心に残る。仲間の力を実感した。
・「治すことをあきらめる」「どもりながら楽しく生きる」を子どもの選択肢に加えてやりたいと思った。
・困難とどう立ち向かうかの核をしっかりするには、仲間や信頼できる大人が必要だと思った。
・吃音についてだけでなく、この3日間は教師としての私の人生の大きな転機となった。
・みんなが知っているヘレンケラーの話が、感動を強調するため、映画や舞台で変形されていることに驚いた。
・吃音に対する意識が、3日間でガラガと変わっていったのに自分でも驚いた。
などなど、3日間で吃音に対する考えが全く違ったものになったと、書いて下さいました。
私は何も、私の主張を一方的に話したわけではありません。世界最新といわれるバリーギターの統合的アプローチ「ゆっくり、そっと、やわらかく」を指導しようとしている世界や日本の吃音の事情も、私と違う人の考えや臨床も当然話しました。
しかし、学生の皆さんは、親として子育てを経験した人であり、通常学級や支援学級で、たくさんの子どもたちとつきあってきた人たちです。自分が共感しないものを鵜呑みにする人たちではありません。また、4月から大阪教育大学で様々なことを学び、臨床をしてきた人たちです。その人たちが、真剣に私の話に耳を傾け、レスポンスし、質問し、一緒につくりあげていった、今回の3日間は、私にとってもとても、うれしく、楽しい時間でした。
やはり私は、吃音について質問され、話すのが、一番心弾み、うれしい時間なのです。
吃音サマーキャンプの報告もしないままに、大阪教育大学の集中講義の報告でした。
2011年9月28日 日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二
かつて、専任講師として勤務していた、古巣の大阪教育大学へ、いまでもずっと非常勤講師として講義に行っています。昨日、4日間の大阪教育大学、特別支援教育専攻科の集中講義が終わりました。4日間といっても、今回は、初日が台風のために休講で、時間を延長して、3日で4日分の講義を行いました。
学生といっても、内地留学の、特別支援学級や、ことばの教室の現職のベテラン教員です。私の講義スタイルは、いつも、スクール形式ではなく、コの字型の座席で、全員の顔が見えるようにして、ひとりずつと対話しながら話します。私が一方的に話すことはしません。
『親、教師、言語聴覚士が使える 吃音ワークブック』(解放出版社)を教科書として使いますので、話したいことは、学生の手元にあります。なので、安心して脱線しながら、学生と対話をしながら、話が進んでいきます。質問に答え、提案し、また質問に答える。このような講義スタイルしか、私はできません。
今年も、学生のみなさんは本当に真剣に考え、私からの質問にもしっかりレスポンスして下さいました。真剣な時間が、あっという間に過ぎていきます。「すみません、おトイレに」と言われて、休憩時間を大幅にオーバーしていたことに気づくこともありました。実際にどもる子どもの指導をしてきた人や、長年、支援学級で子どもたちと真剣に向き合ってきた、ベテランの教師が、自分の教育観、子ども観を、経験してきたことを、本音でぶつけて下さるので、私にとっても、とても刺激的です。
吃音親子サマーキャンプのビデオや、TBSやNHKの私が出演した番組などを見てもらいながら、アメリカの吃音臨床と、私の提唱する「日本の吃音臨床」について、熱く語ります。竹内敏晴さんから、いつも、「伊藤さんは、力強く、熱く語りすぎる」と叱られていたのですが、他のことならともかく、アメリカ言語病理学への批判の話となると、つい、熱くなってしまいます。そんな、暑苦しい私の話を学生はよく聞いて下さいました。毎日、講義の終わりに書いてもらう振り返りを読むと、吃音について、理解が深まっていくのが分かります。
最終日はいつも、プレールームで、竹内敏晴さん直伝の「からだのゆらし」でやすらぎ、「日本語のレッスン」で、歌を歌います。今年は、吃音親子サマーキャンプの親の表現活動で使った詩をみんなで読んでもらいました。工藤直子さんの詩で、からだで表現するというものです。楽しい時間でした。
最後に、「奇跡の人」で知られる、ヘレンケラーとサリバンの教育について話します。ポンプから出る水が手にかかり、「ウォーター」とことばを発見するシーンが、映画や舞台で出てきて、よく知られています。ところが、自伝やサリバンの手紙などを紹介して、あれは真実ではないことを話しますと、みんなはびっくりしますが、納得してくれます。
最後の振り返りで、ひとりずつ3日間の講義の感想を言っていただき、最後のコメントをするのですが、私にとっては、とてもうれしい幸せな時間です。私の考えや提案が深く伝わったと実感できるからです。
・たくさんの仲間がいて、自分を語るものをもっている伊藤さんや、どもる子どもや、どもる人がうらやましい。
・伊藤さんと出会わなければ、吃音の人たちを誤解したまま接していたと思う。
・吃音にとても興味がもてた。伊藤さんの考えが早く世界に広がることを願う。
・教師として、親として、自分をふりかえるいい時間になった。
・吃音だけでなく、コミュニケーション障害の全般的なとらえかたを学んだ。
・人生何事も選択肢があることを、子どもたちに知らせていきたい。
・「どもりを治さなければならない」の考えは、子どもたちの自己否定につながることを肝に銘じたい
・「子どものために」は、「子どものせいだ」になるので、子どもも自分も楽しめる授業や活動をしたい。
・キャンプの映像が心に残る。仲間の力を実感した。
・「治すことをあきらめる」「どもりながら楽しく生きる」を子どもの選択肢に加えてやりたいと思った。
・困難とどう立ち向かうかの核をしっかりするには、仲間や信頼できる大人が必要だと思った。
・吃音についてだけでなく、この3日間は教師としての私の人生の大きな転機となった。
・みんなが知っているヘレンケラーの話が、感動を強調するため、映画や舞台で変形されていることに驚いた。
・吃音に対する意識が、3日間でガラガと変わっていったのに自分でも驚いた。
などなど、3日間で吃音に対する考えが全く違ったものになったと、書いて下さいました。
私は何も、私の主張を一方的に話したわけではありません。世界最新といわれるバリーギターの統合的アプローチ「ゆっくり、そっと、やわらかく」を指導しようとしている世界や日本の吃音の事情も、私と違う人の考えや臨床も当然話しました。
しかし、学生の皆さんは、親として子育てを経験した人であり、通常学級や支援学級で、たくさんの子どもたちとつきあってきた人たちです。自分が共感しないものを鵜呑みにする人たちではありません。また、4月から大阪教育大学で様々なことを学び、臨床をしてきた人たちです。その人たちが、真剣に私の話に耳を傾け、レスポンスし、質問し、一緒につくりあげていった、今回の3日間は、私にとってもとても、うれしく、楽しい時間でした。
やはり私は、吃音について質問され、話すのが、一番心弾み、うれしい時間なのです。
吃音サマーキャンプの報告もしないままに、大阪教育大学の集中講義の報告でした。
2011年9月28日 日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二