会えなかった高校一年生


 4日間の関東地方巡業を終え、東京発最終の新幹線で大阪に帰りました。

 1日目は、横浜・どもる子どもの保護者、臨床家のための吃音相談会
 2日目は、伊藤伸二・東京一日ワークシヨップ
 3日目は、栃木県のことばの教室担当者の研修会
 4日目は、栃木県のどもるこども親、担当者のつどい

 楽しかった長い一日が終わった感じて大阪にもどりました。どもり一色の4日間は、とてもうれしい出会い、がたくさんあり、「どもりでよかった、どもりでなければ、こんなにたくさんの人と、出会うことはなかった、有意義な時間は送れなかったし」と思うと、どもりに感謝しているのです。
 この4日間のことは、またブログで紹介します。自分の企画した、吃音親子サマーキャンプと吃音ショートコース、また、山口での吃音キャンプなど、報告したいことがたくさんありながら、すぐに次のスレジュールがきてしまい、報告できないのが残念です。順番は変わりますが、おいおい、記憶がうすれないうちに、書いていきたいと思います。

 たまたま時を同じくして高校生一年生に、出会ったので、タイトルで(1)とつけ書きました。(1)つけながらながら間があくとおかしいので、今回は、もうひとりの高校生のことを書きます。

 実は、その高校生とは、この4日間のどこかで会えるかも知れないと、期待をしていたのです。が、残念ながら会えませんでした。
 私は。関東地方へいくことはそんなにないので、関東地方のスケジュールを話し、会いませんかと誘いました。かすかに会えると思っていたので残念でした。

 彼女の電話相談はこうです。

 芸能関係に進みたいが、どもる人間でもなれるかという相談です。芸能関係といっても何をしたいのと尋ねると、「歌と踊り」だそうです。歌や踊りが好きで、得意で、周りの仲間が「すごい、すごい」とびっくりする。私も自信があるけれど、
そして、いま人気のあるオーディションをうけるのだそうです。歌や踊りは吃音とは関係ないので、自信があるけれど、どもるから、将来が心配だというのです。

 「不安や、心配があるだろうけれど、自分の好きな、得意な道に挑戦するのはステキだよ。大変協奏の激しい世界だから、成功するのは一握りのごくわずかな人しかいないということを知っていて、挑戦しようとするのは、すごいことだ。是非、挑戦したらと、女優やミュージシャンのなかに、どもる人はたくさんいる」

 具体名をあげて話すとびっくりしていました。彼女の声がだんだん弾んでくるのがわかりました。

 「頑張っ芸能人になって有名になって「私はどもるんです」とみんなに公表して、吃音のことを話してくれたら、どもる子どもにとってとても勇気づけになるし、吃音のことを社会に知ってもらう良い機会になるから、君だけのためでなく、後輩のためにもがんばって」

 こう話して、できたら会いたいねと言ったのですが、会えずに残念でした。
 前回紹介した、「言語聴覚士、ジャーナリスト、理学療法士」と具体的な、なりたい職業をあげて、夢をもつて考えている高校1年生に脱帽です。
 将来が不安で不安で、職業のことなど、考えも、考えたくもなかった自分自身の高校生のことを考えると、まぶしいくらいです。

 すんなりとはいかないことは多いでしょう。吃音が問題になることがあるかもしれません。だけど、自分の吃音をしっかりと認めつつ、こう生きると自分で考え、決めようとしているこの高校生には、道がひらけるだろうと思います。

 また、電話や、直接あう機会があるかもしれません。私にできるお手伝いはしたいなあと思っています。その機会がくることを楽しみにしているのです。


追記  宇都宮であった小学校の先生が、このブログを読んで下さっていて、いいなあとおもっていたら、下の方で「どもりは治る」などの宣伝がでてきて、腹が立つことがあると話してくれました。
 バソコンから見ると、宣伝はでてこないのですが、ケータイでみると、業者の変な宣伝がでてくるようです。吃音に関係のないサイトならいいのですが、「訓練できますとか、治します」の宣伝が、私のこのブログの後にでてくるというのは、とてもいやです。
 このブログは無料のものではなく、有料なので宣伝がつかないとおもっていたのに、残念です。どなたか、そのようなものがつかない方法があれば教えて頂けませんか。このブログには、コメントを受け取る設定はしていませんので、私のメールにお知らせ頂くことになりますが、よろしくお願いします。
 jspsi@iris.eone.ne.jp
感想などもお寄せいただくとうれしいです。メールでレスポンスいただいた人には、私もレスポンスしたいと思います。

    2010年11月24日  
         日本吃音臨床研究会 会長   伊藤伸二