今朝8時半、電話がありました。誰から?と思ってとると、桂文福さんの元気のいい声でした。開口一番、「昨日はありがとうございました」と。実は、昨日、文福さんの落語会に行ってきたのです。

三福会チラシ 10月16日(日)、大阪市内の高津の富亭で、三福会という落語会がありました。
 これは、長いお付き合いのある桂文福さんから案内を送っていただいたものでした。桂文福さんとのお付き合いは古く、いつも、一門新聞や新聞・雑誌の記事のコピーを送っていただいています。僕たちも、毎月「スタタリング・ナウ」をお送りしています。コロナ禍では、大阪吃音教室にも顔を出していただいたこともありました。久しぶりに文福さんの生の声を聞きたくて、出かけました。
三福会は、桂文福さん、森乃福郎さん、笑福亭仁福さんの三人の会です。送っていただいたチラシには、「今春、五十周年を迎えた同期三人衆が、秋の夜長、皆様に福をお届けします」とあります。
 会場の高津の富亭は、大阪市内の高津の宮にあり、高津の宮の境内には、五代目文枝の碑がありました。ちょっと早く着いたのですが、聞き慣れた声が響いてきます。文福さんの声です。ご挨拶をして、教えていただいた桂文枝の碑をまず見に行きました。亡くなる2ヶ月前に、この高津の富亭で最後の落語をされたとか、立派な碑がありました。後ろには、この碑を作った人の名前が刻まれていました。もちろん、文福さんの名前もありました。

 午後2時開演の会場は、満席でした。最初は、文福さんの息子の鹿えもんさんの落語でした。文福さんと僕たちが出会う直接のきっかけを作ってくれた息子さんです。NHKの「にんげんゆうゆう」に僕がスタジオ出演した番組を録画して、巡業から帰った文福さんに見せたのが息子さんです。すぐに文福さんから電話がかかってきました。デビュー当時を知っているので、だんだんと高座に慣れてこられたことが分かる舞台でした。
 中入り後は、文福さん。相撲甚句に、歌謡ショー、とても賑やかな舞台でした。吃音の方も絶好調でした。最後に、三人がそろって、歩んできた五十周年についてお話されました。同期には、鶴瓶さんがおられるとのこと、鶴瓶さんからのメッセージも紹介されていました。

 話すことが商売の落語家、文福さんにもいろいろと苦労があっただろうと思います。でも、やっぱり、好きな道を歩んできたということは、その苦労を補って余りある喜び、楽しさがあったのだと思います。
 そして、今朝の僕への電話のように、こまめに連絡をとり、人を大事にする文福さんだからこそ、五十年、芸の道を歩んでこられたのだろうと思いました。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2022/10/17