いよいよ今週の金曜日から、第31回吃音親子サマーキャンプが始まります。このコロナ禍の中、どもる子ども、その保護者、ことばの教室担当者やどもる大人など、80名が参加します。
 感染対策を第一に考えて、内容・プログラムも変更しました。吃音についての話し合いと、自分の声やことばに向き合う表現活動は欠かせません。例年のように事前合宿をしてのお芝居はできませんが、それに代わる表現活動を考えました。
 子どもたちの生きる力につながる3日間を過ごしたいと願っています。

 「どもり・親子の旅」を読んだ、同じようにどもる子どもの保護者の感想を紹介します。

吃音親子キャンプに期待すること
   〜『どもり・親子の旅』を読んで〜
                福田雅子(どもる子どもの親)


 この冊子を読んで、私は今なお受け入れの悪い母親ですし、我が子を見ても、同年代のどもる子どもと比べて随分心身共に幼いように感じました。
 私は昭和62年に双子を、2年後に三男を出産し、やんちゃな3人の子育てにイライラした毎日を送っていました。
 次男が4歳頃、突然「お、お、おかあさん」と、どもるようになりました。そして双子の長男もいつしか同じくどもるようになったのです。私はこの時から、長男・次男を随分叱り、押さえ続けてきた結果で、私の子育てが悪かったと思ってきました。
 学校での次男は、いつも自由帳だけが頼りで、毎日毎日、真っ黒になるほど描きなぐって帰ってきます。「秀ちゃん、休み時間は何してるの?」と尋ねると、「自由帳」と答え、友達がいないことが親として大変辛いことでした。
 伊藤伸二さんが講演会で、勉強より友達とかかわる休み時間が辛かったこと、楽しい遠足がお弁当を一緒に食べてくれる友達がいないために大変憂鬱だったと話されたことが、次男の心中と重なり、親として何もできず、ただただがんばってと願うしかありませんでした。
 去年の9月より、ことばの教室に通わせていただくことになりました。担当の先生は、自分もどもることがあるよと次男に話しかけて下さいました。私が学校の様子を聞いても「どうでもいいやん」と言っていた子が、ことばの教室に行くとすすんで吃音や学校について語り合っている姿に、私が子どもの悩みや吃音について話させなかったのだと思いました。担任の先生にも連絡して下さり、クラスの次男に対する理解が深まったのか、友達関係も広がってやっと明るさを少し取り戻してくれているこの頃です。
 体験文からは、親がしてやれる限界があり、子どもを信じて見守ってあげる大切さが切々と伝わってきました。ことばの教室の先生が何故私にこの吃音親子体験文集を送って下さったのか、読むうちに少し理解できたように思います。
 今年のキャンプは参加できませんが、冊子を読んで、苦難を幸福に変える、それがキャンプで体験できることを確信しました。私共もいつか参加し、同じ悩みや体験を共有できる親や子どもたちと出会って学んでいきたいと願っています。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2022/08/15