第1回吃音SC 梅田・内須川・伊藤並んで 昨日のつづきを紹介します。これが最後です。まとめとして、「吃音がよくなるとは」の項目があります。吃音の問題とは、症状の問題ではないことがはっきり分かります。
 ただ、ことばの教室で行われていることを、内須川先生は「治療」と言っておられました。これがひっかかります。お話の全体を丁寧に読んでいけば、「治療」「治す」ということではないのですが、「治療」ということばを使うと誤解を招くのではと思いました。
 吃音ではないのに、吃音やどもる人を心から愛して、僕たちとも第一回吃音問題研究世界大会だけでなく、プライベートでも深くつきあって下さった内須川先生。内須川先生のような、吃音を心底愛した吃音研究者は、以後、現れていないだろうと、僕は思います。
 吃音研究にささげた人生でした。

  
内須川式吃音治療指導法(4)
            昭和女子大学教授(日本吃音臨床研究会顧問)内須川洸

規範性を壊した後の処置
1.徐々にプレッシャーを
 最初は規範性を取ることで、プレッシャーを抜き、抜き終わったら今度はかけるんです。このかけ方が大事です。
 「うちの子、どもらなくなった」と、たいていお母さんは、天にも昇る気持ちですぐに、「お勉強」となる。勉強は禁句です。子どもが勉強をしたいと言えば別だが、お母さんから言ってはいけない。宿題も本人がやりたくなければやらせない。勉強は当分お母さんの方からやらせてはいけない。これはプレッシャーでも最も大きなプレッシャーなんです。お母さんは、すぐ大きなプレッシャーを持ってくる。すると吃音が再発する。
 良くなったと思えば又悪くなるこれを繰り返すと悪化、成人の吃音と同じ。悪い悪化の方法。
 だから、慎重に、プレッシャーを少しずつかけていくことです。
 理想的なのは、幼児期に規範を壊す治療を完成させ、小学校の6年間をかけて徐々にプレッシャーをかけていくことです。
 1年〜5年生と年月がたつごとに、プレッシャーは自然に増していく。当然勉強も難しくなる。様々な条件が加わってくるから、プレッシャーも高まってくるでしょう。それでも吃音は悪くならないで、6年生になる。私は理想的な指導法でも6年間かかると思う。最低6年、吃音の治療には長い年月がかかると考えて下さい。
 幼児期にうまくいかなかった子どもの場合は、学童期であっても前に述べたような、規範性を取ることから始める治療が必要です。家庭で行える幼児期と違って、学童期は義務教育の場なので、難しい問題が起こります。学校は休めないし、治療のやり方と教育とは矛盾します。
 そういう事すら知らない先生がまだいる。治療と教育、どこが違うのということも知らない人がいる。だから、普通学級の先生がことばの教室に見学に来て、「何をしているか。遊んでばっかり。ちっとも教えないわ」と思う。当たり前ですよ、治療をしているんだもの。普通学級とことばの教室の先生はする事が違います。片方は教育をし、片方は治療をしている。少なくとも普通学級の先生が吃音の子どもに対する望ましい扱い方を心得て欲しい。これがなかなかうまくいかないのが、現在のことばの教室の問題点です。ことばの教室の先生が一生懸命頑張って良くしても、普通学級に戻って悪くなったら、元の木阿弥です。
 プレッシャーをかける狙いは、その指導の目標は、人間関係のタフネスを作ることです。タフネスができないと、吃音症状は一時的に良くなっても、循環性があるから悪くなる。
 タフネスがついて思春期を迎えるようになったとき、吃ったからといって、「いいよ。構やしないよ」と言えるようになればいい。
 いちいち気にしてたまるかという状態になれば、吃音が出たって恐ろしくない。

吃音がよくなるとは
 吃音がよくなるとはどういう状態かというと、私は3つの基準をあげています。
,海箸个両評
 すっかり吃音が消えなくても良い。どもってもいいが、ブロック(難発)のどもり方でなく、繰り返しや、引き伸ばして、よく喋ること。主張し始めたら、どもっても途中でやめることがないこと。つまりどもってもどんどん積極的に話す。ここまで成長する。これはそんなに難しいことではない。
⊆匆饑の発達の増強
 吃音の子どもは社会性の発達が劣っているわけではない。平均では独りぽっちの子どもは少ない。型どおりには友人関係が出来ているが、服従の関係で、ボスの意見に反対をしないから嫌がられない。本当は友人ではない。つまり喧嘩が出来ない。喧嘩をしないで友人にはなれない。こういう学習が十分にできるようになる。だから、自分が友達を集めてきて、リーダーシップをとる。がき大将になれば最高だけど。友達がたくさんできて、自由に友達を作れるというところまで変わる。服従的な友人関係を越えることです。
3惶蘚応が良くなること
 第2ができれば、この第3は自ずからできます。
 学校がおもしろくてしようがなくなって、毎朝喜んで学校へ通うようになるのを学級適応が良い子といいます。
 適応がよくなるには、ふたつの条件があります。まず、友達ができること、もうひとつは担任の先生と仲良しになることです。担任の先生の前で、言うことも言えないのではだめです。先生と自由な人間関係がとれることが大切です。(了)


日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2022/01/07