1992年、サンフランシスコで開かれた、第3回吃音問題国際大会終了後、『自分を好きになる本』(径書房刊)の著者パット・パルマー博士のワークショップを開きました。
 1991年の秋、本屋の児童書売り場で、『自分を好きになる本』を見つけました。日頃「自分を好きになる」「どもりを好きになる」と言っていたので嬉しくなり、出版先の径書房に連絡を取り、著者の連絡先を教えていただきました。
 国際大会に参加するため、アメリカに行くので、地図で調べるとそれほど遠くないことを知り、パルマーさんにワークショップができないだろうかとお願いしたところ、喜んで引き受けて下さったのです。
 パルマーさんがコロラド州のデンバーからサンフランシスコまで来て下さり、アサーティブ・トレーニングワークショップが開かれました。
 パルマーさんは、穏やかで、大柄なおばさまでした。和やかで愛情と優しさに満ちたワークショップでした。一日の短いワークショップなので、アサーティブ・トレーニングのごく一部分だったのですが、僕たちの仲間の神戸吃音教室「ほっと神戸」を主宰している伊藤照良さんが、ワークショップの報告を書いてくれていました。実習を説明する、パルマーさんの話や実習など、私たちが体験したことを報告します。
 30年近く前のことですが、パルマーさんの穏やかな語り口、みんなで輪を作って、ひとりひとりを大切にした進行は、印象的でした。終わった後のさわやかな満足感は、今もよく覚えています。時々、そのときの体験をもとに話をする時もあります。懐かしく思い出しながら、僕も読みました。今日は、参加者がどのような関心をもって参加したかです。
 
  
アサーティブ・トレーング
                  報告     伊藤照良
 
 まず最初に、パルマーさんが、このワークショップにどのようなことを期待して参加したのかを、どのようなことに関心があるかを尋ねました。
 参加者の関心
○私は自分が考えていることを伝える前に、相手の反応を想像してしまって、本音が表現できないのです。
○私は、どちらかというと攻撃的な発言をすることが多いので、適切な表現方法を学びたいと思います。自分の性格が嫌いなので、自分を好きになれればとも思っています。
○私は自分が好きです。もっと好きになれるようにと思って参加しました。
○アサーティブに生きることを、自分の人生に取り入れたいです。
○もっと楽しめる人生があるかもしれないという期待で参加しました。
○私は「私を好きになる本」を読んで感動して涙が出ました。今日はワクワクしています。
○自分の知らない自分を見つけて、もっと好きになりたいです。
○養護学校で教員をしていますが、子どもを否定的にばかり見ている自分に気づくことがあります。子どもたちの良いところを見つけたい。
○私はなにかあるとすぐに不安を感じてしまう方なので、不安を感じている時、不安をもちながらも、うまく自己表現する方法を学びたい。
○ノーということがいえず、後で後悔したり、嫌な気持ちになりがちです。自分の気持ちに正直に、時には「ノー」といえる人間になりたいです。 (報告・つづく)


日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2021/7/19