一年前から、どもる子どもの保護者、どもる子どもや保護者の教育にあたる、ことばの教室の担当者の研修会が計画されていました。先日、計画どおりに実施され、話をしてきました。研修会に向けての、担当者との一連のメールのやりとりを紹介します。

 【4月 研修会担当者からのメール】
 大阪は感染が心配ですが、お元気でお過ごしでしょうか? 私たちのところは、大都市ほどではありませんが、感染が報告される日はドキドキします。教員も在宅勤務を勧められています。さて、7月の研修会の計画が決まりました。
 午前は保護者と子ども対象の学習会、午後は教員対象の研修会です。
 コロナの影響で、新年度がスムーズにスタートできなかったので、計画立案のための話し合いもままならず、報告が遅くなり、申し訳ありませんでした。今後もコロナの感染の状況がどうなるかわかりませんので、予定通り開催できるのか不明です。開催できるとすれば、このような内容でお願いしたいです。

9:30〜10:15 保護者対象の学習会
11:00〜12:00 伊藤先生と子どもの語る会
   伊藤先生と通級担当者とのランチ学習会
13:30〜15:30 教員向け講演会 通級指導者や通常学級の担任対象

 【7月 研修会担当者からのメール】
 コロナがまた、増えてきましたね。新幹線で移動される伊藤先生の感染が心配です。それで、開催の仕方の変更も考えておいた方が良いのではと思っています。伊藤先生は、ZOOMを使っていらっしゃいますか? このまま、感染が増えるようでしたら、ZOOMでの研修会に変更しようと考えています。ZOOMを使っていらっしゃらないようでしたら、中止や延期も検討します。
 ZOOMの利用について、お返事ください。

 【伊藤からの研修会担当者へのメール】
 ご連絡ありがとうございます。コロナ感染者がまた増えてきた中、私のことをご心配下さり、恐縮です。ZOOM、延期、中止といろいろと考えて下さり、ありがとうございます。
私の考えを少しお伝えし、どのようにされるか、みなさんの決定にお任せします。
 このような状況だからこそ、少人数でも会ってお話ができることを私は希望します。4日間出向しているところで、対面講義ができず、ZOOMも学校側が対応できていなかったために、学生に、指定していた教科書のページを知らせたり、資料を送ったりして、それを読んだ上で自分の考えを書くという4回のレポートにしました。提出されたレポートが送られてきましたが、ちゃんと書いている学生もいましたが、昨年までのように対面で講義をして、その後返ってきたレポートとはかなり違うものでした。
 私のように、知識だけを伝えるのではなく、ある意味「哲学」を、学生と、コミュニケーションをとりながら講義をすすめる人間には、リモートでは、やはり限界を感じました。
そこで、私のかってな提案です。こんな時だからこそ、少人数でも集まれる人は集まりませんか。伊藤も、細心、最大の注意をして、消毒、マスクなど個人でできることは徹底してしますので、皆さんも会場の換気と、三密にならないようにしていただければ可能かと思います。不安な人もいるでしょうから、参加者はかなり減ると思いますので、その人のために、また今後のみなさんの研修のために、「動画を作成する」目的で、少人数でも集まるとの提案です。
 日本吃音臨床研究会のホームページにいくつかの「動画」をアップしています。あれは、二人で話しているのではなく、聴衆の前で話をして、その反応も意識しながら話しています。一人、カメラを前に話すのとは全く違います。
 今回、お話しようと予定していた「健康生成論的アプローチ」は、今後の特別支援教育、ことばの教室の教育にとって、今、私が考えている最新の、かつ、今後の教育について不可欠なテーマです。保育、教育、家庭での取り組みについて話したいと計画しています。
 「with コロナ」のストレスの大きな時代に、ストレスへの対処力となる、健康生成論、レジリエンスはとても大きな視点を提供してくれます。それを「動画」にして、今後の研修に、皆さんで活用していただくことはどうでしょぅ。予定していた参加者が集まらなくても、聞いてくれる人がいる場として、少人数でも集まっていただければ、今回の企画は成立すると考えたのです。
 ZOOMは、仲間で経験し、その環境はありますが、私は苦手です。いろいろな事情があるかと思います。私の勝手なお願いというか、考えをお伝えしました。
 延期や中止も含めて、ご検討下さい。     

【研修会担当者からメール】
 研修会の件、伊藤先生のお気持ちを担当者一同ありがたく受け取りました。研修会は計画通り、開催することに決めました。移動の心配はつきませんが、私たちの研修会のために、いらしてください。ただ、日々事態は変化していますので、先生の方でご心配が大きくなりましたら、ご遠慮なくおっしゃってください。こちらも、準備をしっかり整えたいと思います。ご提案いただいた、動画の撮影も有り難くさせていただきたいと思います。

 こうして、研修会は、予定どおり、開催されました。
伸二のスマホから静岡研修写真 
 【研修会後、僕の仲間たちへの報告メール】
 昨日、研修を無事に終え、帰ってきました。ビデオ撮影者と、後は少人数の参加かなと思っていましたが、午前中の保護者の時は40名、午後の教員の時は、まだ夏休みに入っていなくて、学校の授業がある日にもかかわらず、50名ほどが参加してびっくりしました。これまでと同じ、通常の研修会でした。消毒、マスク、換気は徹底していました。みんな真剣に聞いてくれました。今年は、第9回親・教師・言語聴覚士のための吃音講習会が中止になったので、せめて話ができるところではと思い、一所懸命話しました。ここの地区のことばの教室の教員には少し伝わったと思います。

 【研修会翌日、研修会担当者からのメール】
 昨日は、1日ありがとうございました。お疲れはとれたでしょうか?
 伊藤先生のお話にことばの担当者達は、勇気づけられたり方向性を示していただいたりし、明日からの指導に生きるお話をいただきました。ことばの担当者以外の教員達は、どもらないように話せるようになることがその子のためと考えていたことが、そうではないという考えを知って、意識が変わったなどの声が聞こえてきました。先生にお越しいただいて、直接お話を聞けて本当に良かったです。
 また、アンケートや撮影したものを、お送りします。
 これから、暑くなり、コロナの心配も尽きませんが、ご自愛くださいませ。本当にありがとうございました。


日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2020/7/31