1996年10月に、僕が担当した大阪吃音教室の講座の紹介

間直之助の碑 ネットから コロナウイルス感染拡大による自粛前に出かけた比叡山ドライブウェイで、偶然に出会った、日本ザル研究者・間直之助の碑をきっかけに、間直之助、映画監督・羽仁進、そして、大阪吃音教室の開講式に飛び入り参加して下さった落語家・桂文福さんと、吃音と共に生きた人を3人、シリーズのように紹介してきました。
羽仁進16.5  文福 この「吃音と共に豊かに生きた著名人に学ぶ」は、大阪吃音教室の講座のひとつとして、行われてきましたし、『親、教師、言語聴覚士が使える、吃音ワークブック』(解放出版社)にも、どもる著名人として36名の紹介もしています。
 吃音との向き合い方は、人それぞれです。僕たち自身の生き方は、NPO法人大阪スタタリングプロジェクトが制定している、自分史を綴る「ことば文学賞」で分かち合ってきました。自分以外のどもる人の人生を知ることは、自分を検討することにもなり、新しい発見と、自分への勇気づけにもなっていました。実在の著名人の生き方を知ることは、今、自分の生き方を考える上で、参考になるでしょう。ことばの教室で、子どもと一緒に勉強することもできそうです。
 そこで、1996年10月に、僕が担当した大阪吃音教室の講座「吃音と共に生きた人に学ぶ」の報告を紹介します。講座で話しているそのままを再現していますので、ライブ感覚でお読み下さい。

大阪吃音教室だより  吃音と共に生きた人に学ぶ
                    10月25日 担当:伊藤伸二

 1996年10月25日の大阪吃音教室
 先輩のどもる人に出会って、あっ、こういう生き方もあるのか、こんなふうに悩みとうまくつきあっていたのかと、直接に具体的な見本から影響を受けることがあります。セルフヘルプグループの大きな役割は、具体的に目の前に見本となるようなどもる人がいて、直接出会えることです。夏の吃音親子サマーキャンプでも、小学生、中学生、高校生、大学生、社会人と全年代のどもる人がいるから、小学校の子どものお母さんは、すぐ中学生の子どもと話すことができる。就職が不安と思ったら、大学を卒業して就職した人に話を聞くことができる。いろいろな年代の人と直接会って、どんなことで困っていたり、どんなことを考えたりしているかを聞けるいい機会になっています。
 今日は皆さんと一緒にちょっと有名人、僕らよりかなり頑張っている人のことを紹介し、皆さんからも、知っている吃音の有名人を教えてもらいながら、そこからどういうことが生きるヒントとして得られるだろうかを考えてみる大阪吃音教室にしてみようと思います。ここに、たくさん吃音を生きた人が、吃音について書いている本を持ってきましたが、これらを読んでみると、今現在活躍している人であっても、学童期、思春期の頃、吃音の独特の辛さ、悩みをいっぱいもっています。喋れない、対人関係がうまくもてない、消極的になって、自己否定になって自分が嫌いになっている。ほとんどの人がそれらの経験を経て、それぞれの生き方をしていますが、大胆に4つにわけてみました。それぞれについて思い浮かぶ人を挙げて下さい。

 ゝ媛擦鬚覆鵑箸治そうとして闘った人
 一生懸命治そうとがんばった人、そして、ある程度治ったり、治らないまでもほとんど分からないくらいまで克服した人です。紀元前300年代の古代ギリシャの政治家・大雄弁家として知られる、〈デモステネス〉がトップでしょうか。日本の首相の〈田中角栄さん〉、週刊朝日の編集長だった、評論家の〈扇谷正造さん〉、現在も現役のアナウンサーの〈小倉智昭さん〉などがそうです。

◆ゝ媛擦里匹發蠅里燭瓩棒犬方を変えた人
 弱点、短所として自分がとらえた吃音とは闘わないで、どもりながら、自分のもっている、やさしさや、弱さを正真に認め、それに沿うた生き方をしようとしてきた人達がいます。運命として定められた道は、どもっていたり、弱さや優しさをもち過ぎるとできないだろうと、その道はあきらめた人です。皆さんも、あまり知らないよね。後で紹介します。

 吃音とは関係なく、自分の生き方を貫いた人
 確かに吃音に悩んだことはあったけれど、吃音に自分の人生を影響されずに、自分のやりたいこと、自分のしたいことがみつかり、そのことを追求していった人ですが、作家が多いです。作家でどもったことのある人、知ってますか。〈井上ひさしさん〉〈大江健三郎さん〉〈藤沢周平さん〉がそうですね。マンガ家では『土佐の一本釣り』を書いた〈青柳裕介さん〉、映画監督の〈羽仁進さん〉などです。

ぁゝ媛擦任茲ったと言う人
 「吃音でよかった、吃音はいいことがあるんやで、どもりは得をするんやで」と言っている人がいます。これは後で紹介します。
             大阪スタタリングプロジェクト「新生」1996年11月号 


 大阪吃音教室では、このように吃音の著名人を分けて、紹介していきました。
 次回から紹介していきます。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2020/06/17