読書介助犬(2)を書く前に

 読書介助犬(1)を書いてすぐに続きを書く予定でしたが、小児科の医師会の研修会で話す講演集の原稿締め切りがあり、そちらにかかりきりでした。僕は本当に不器用な男で、一つのことが始まるとつい集中してしまい、他のことがおろそかになります。医師会では何度も話していますが、今回は大きな研修会なので、吃音について小児科の医師に知って欲しいとの強い思いがあり、気合いが入りました。肝心の提出原稿にすぐ取りかかればそんなに時間はかからないのですが、どうしてもまず、周辺の本を読んでしまいます。
 それは、読書介助犬の話とも関わるのですが、小さな援助の提案です。吃音を専門的な治療、専門的といっても「ゆっくり話す」ことしかないのですが、そのような言語訓練の専門的支援に対して、僕が提案するのは、50年以上言い続けている、間接的援助、小さな援助です。僕たちが54年考え続けてきたのは、間接的で小さな援助です。
 僕たちが夏に開催する、親、教師、言語聴覚士のための吃音講習会は、毎年テーマが変わります。ベースとして流れている大きなテーマは変わらないのですが、特別に取り上げるトピックスは毎年変わっています。昨年は「健康生成論」でしたが、今年は「どもる子どものための小さな援助論」の話をしようと今のところ計画しています。医師会の講演資料も「小さな援助論」にしました。
 今回取り上げたトピックスは、児童精神科医の鈴木啓嗣さんの『子どものための小さな援助論』です。発達障害、不登校や引きこもりについて書かれた本です。2011年に読んで、とても共感したのですが、直接取り上げて話すことはありませんでした。しかし、毎日新聞の社説で、幼児吃音に成果があがっている治療法があると紹介され、また、別の紙面では読書介助犬が取り上げられていました。これはもう一度読み返さないといけないと思い、しっかりと読みました。文章が難しくなかなか進まなかったのですが、主張していることはすべて納得できることばかりなので、なんとか最後まで読み込みました。同じく読んだ、『ぼくらの中の発達障害』(青木省三・ちくまプリマー新書)に力を得て、締め切り15分前に、ぎりぎりでしたが、「どもる子どものための小さな援助論」の原稿をメールで提出することができました。

 小児科医師会の研修の講演資料のため、また、コロナウイルスの世界情勢や、政府の対応のまずさなどへの嘆きなどから、ブログがストップしてしまいました。コロナを言い訳にはできないので、読書介助犬(2)も早く書きたいと思います。
 『子どものための小さな援助論』(鈴木啓嗣 日本評論社 2011年発行)、とてもいい本です。吃音や不登校、引きこもりの問題に関わる人に是非読んで欲しい本です。

 日本吃音臨床研究会会長 伊藤伸二 2020/03/23