大阪吃音教室 新年恒例「どもりカルタ」

 病気や障害を生きることにとって、「笑いとユーモア」はとても大事な事だと僕たちはずっと考えてきました。2005年には、「笑いとユーモアの人間学」として、3日間のワークショップを開きました。そのとき来ていただいた笑い芸人、松元ヒロさんとは、いまだにつきあいが続き、時々東京まで、舞台を見にいっています。笑いとユーモアの具体的な取り組みとしての「吃音川柳」は、ずっと講座として続いています。そして、新たに始めたのが、「どもりカルタ」でした。この取り組みは、『学習・どもりかるた』の制作に結びつき、どもる子どもの学習用として販売されています。全国のことばの教室の実践として、広がっています。
教室 かるた ホワイトボード教室 かるた みんな 18人の参加者が4つのグループに別れて、読み札を考え、それに合う絵札を描いた後、全員で読み札を味わいました。これで14回目となるのに、ネタ切れにならないのが不思議であり、凄いです。それだけ、吃音は深いテーマであるとの証明でしょう。
教室 かるた かるたのみ 教室 かるた かるたとり1教室 かるた かるたとり2最後の15分間は、童心に帰ってカルタ取りをしました。読み札を作ったグループでの対抗戦、本気のバトルに取り組みました。床に並べられたカラフルな絵札を、ダイブするようにして取る人あり、幸運にもすぐ足元の絵札を、そっと静かに取る人あり……。「これだけはとりたいと狙っていた」など、それぞれに作戦があったようです。
 大阪吃音教室の新年は、こうして始まりました。読み札を紹介します。

あ あけまして 今年も一年 どもりと共に
い 言いたいことは はっきり言おう どもっても
う 嬉しいような いらないような その気づかい
え 選ばれた 百人にひとり このわたし
お 大人になれば 思い続けて はや大人
か かっこよくどもれば 聞き手が 聞きほれる
き 緊張を 飲み込んでいこう 発表に
く くり返す ことばのリズムが 私流
け 携帯の 着信音に ドキッとする
こ こんにちは コココとどもって ニワトリか
さ さっさと言えと言われても そうはいかないどもりかな
し 死ぬまで 毎日 どもりたい
す すっと言えた なんでだろ
せ 先生の指名の声 どきどきしてる国語の本読み
そ そ―っと発音してみても やっぱりどもるよ 本番は
た 大変だ どもりが治って ただの人
ち 超ゆっくり 話し続けて 二十年
つ ついに来た!? どもる僕らの 夜明けは近い
て てんしんめん へんしんめんでも 通じるよ
と 堂々と 今なら言える 「どもりです」
な 何度でも 言い換えできて どもりは とても楽しいな
に にっこり笑って 愛嬌で逃げる どもりかな
ぬ ヌンチャクで 随伴運動 どもらない
ね ネパール人も どもってる
の 残ってることばがないぞ 言いかえできない…!
は 春となり 自己紹介の 季節来る
ひ 必死になると 余計に出ない この出だし
ふ 二日酔い どもりの不調 輪をかけて
へ へんとうせん 腫れて当番 まぬがれる
ほ ほっとした あなたもどもり 同じだね
ま まねしても どもりにならない 歌舞伎役者
み みんないい みんな違った どもり方
む 無理をして 治してみたって ただの人
め メカのよ(う)に 一定間隔 しゃべりたい
も もっとゆっくり話したら 何度も聞いた 嫌なことば
や やまもっさん 本当は言いたい やまもとさん
ゆ 夢の中 どもり忘れて 拍子ぬけ
よ よう来たね どもりのワンダーランド 大阪吃音教室
ら ラブレター 書く手が どもって ふるえてる
り 理不尽だ 「どもり治せ」は 無理なこと
る 留守番電話 何度も録音しなおす どもる私
れ レッツゴー どもってもどもらなくても 行け行けドンドン
ろ ロシア人 ドーピングしても どもります
わ 湧いてきた ことばを何度も 飲み込んだ

どもりカルタ ランダムな並び 『学習・どもりカルタ』は、送料込み1200円。子どもたちが考えた読み札に、どもる子どもの親が、かわいい絵札を書いてくれました。カラー印刷の素敵なカルタです。日本吃音臨床研究会にご注文いただければお送りします。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2020/1/19