吃音講演会・相談会inにいがた
   私たちはひとりではない


 今、旅の途中です。大阪を出て新潟に寄り、そのまま長期旅行中です。そのため、なかなかブログが更新できずにいました。旅も後半に近づき、そろそろ再開しようと思います。

 新潟に、「きつ音セルフにいがた」という会があります。新潟のどもる人のセルフヘルプグループの設立当初からの主要なメンバーでありながら、「吃音を治す・改善する」ことから脱却できない会のグループの方針にはついていけないと退会し、「吃音のまま生きよう」という僕たちの方針に近い会を、家田寛さんとその仲間の人たちがつくりました。家田さんは、僕の古くからの友人であり、その人柄もよく知っていますので、何とか力になりたいとは考えていました。

 僕は、この秋の旅行を新潟方面にしました。そして、家田さんに、「きつ音セルフにいがた」の定例の会に参加するか、何かイベントをしませんかと問い合わせをしたのです。そうして、実現したのが今回のイベントでした。
 どもる人、どもる子どもの保護者だけでなく、ことばの教室の教師など、40名ほどが参加しました。そのイベントの開催にあたり、家田さんたちが発行している会報の一面に、家田さんの文章がありました。僕は、そこに、少数派でいることの誇りのようなものを感じました。僕たちも極めて少数派で、「吃音を治す・改善する」の多数派になることはありませんが、「吃音と共に生きる」が「吃音の本流」だとの誇りがあります。
 思いを同じくする人が少なからず全国にいて下さることはうれしいことです。
 その文章を紹介します。


             
設立満4年に
                               家田寛

 早いもので、私が仲間と共に前の吃音セルフヘルプグループを退会し、「吃音のまま生きよう」という考えのもとに当会を新規に設立して、今年の9月で満4年となる。規模は小さいながら、例会は年11回行い、会報も遅れ気味ではあるが、ほぼ隔月には発行してきた。いわば、「吃音の窓」は8月以外毎月開け、メッセージも隔月若しくは3ヶ月に一度は届け、辛うじて吃音セルフヘルプグループの役割は果たし得ているとは自負してきた。しかし、私たちの考え方を少数の吃音者にのみ伝えるだけでは、浸透させる意味からも、また啓発の意味からも、不十分である。何とかしなければ、と思っていたところへ、日本吃音臨床研究会の伊藤伸二さんよりイベントの話が持ちかけられた。
 私たちだけではできない、しかし、伊藤さんに協力していただけるならできるかもしれない、という完全に他力本願の域で、「吃音講演会・相談会inにいがた」の企画をスタートさせた。当会側の動くスタッフは2名、険しいスタートではあったが、私たちの吃音への考え方と同じく、ありのままの姿で一歩一歩進ませていこうと、スローなスタートではあったが進ませ、今、何とか形が見えてきたかな?というところまで来られたように思う。
 今回のイベントは、主催が当きつ音セルフにいがたと日本吃音臨床研究会、後援には新潟言語障害児懇談会さんにお願いし、さらに新聞社の後援には新潟日報社、朝日新聞新潟支局、毎日新聞新潟支局、読売新聞新潟支局にお願いした。
 内容は、伊藤伸二さんの講演、テーマは「吃音を生き抜くために」。その後質疑応答を経て吃音相談会に。このテーマも「吃音を生き抜くために」。個別相談ではなくオープンで行う。どんなイベントになるか見当もつかないが、少しでも私たちの考え方が理解され、支持されたらいいと思う。
 今回のイベントの目的は当会を発展させることではない。また当会の会員を増やすことでもない。私たちの考え方そのものを吃音者に、社会に浸透させ、啓発していくという目的の一歩を踏み出すことである。この目的の一歩を踏み出し、多くの吃音者に、社会の人々に、「吃音でも話は通じる」、「どもっても伝えることはできる」と、堂々と主張していきたい。そしてさらに一人一人の吃音者が異口同音に主張することにより、吃音に対する半ば固定観念的なものが徐々に崩れ、吃音者が周りに気を遣わずに生きていける世の中になっていくものと、強く信じるものである。
             「かおなじみ」 きつ音セルフにいがた 2019年9月1日 第47号