共感力と想像力

 昨年7月の台風で壊れたままだったベランダの、隣の部屋とのパーテーションの修理がようやく行われることになりました。1月23日の午後、業者の方が来て、直して下さいました。
 6月の地震の被害の修理もできないまま、まだブルーシートに覆われている家が、寝屋川にもあります。ベランダの隣の家との仕切りがなくなったくらい生活上に支障はないので、大したことはないのですが、それでも、きちんと区切られていた部屋と部屋の壁がないのは、ひとつの家に住んでいるような不思議な感覚で、不安定な気持ちになります。ようやくひとつの区切りがつきました。

 自然災害などで、それまでの生活を奪われた人たちのことを思うと、心が痛みます。
 僕のマンションは、7月の台風の区切りがついたのですが、ひとつひとつのできごとがきちんと終わらないまま、新しいことが行われているようです。
 例えば、原発事故をそのままに、原子力発電所が再稼働したり、原子力発電の輸出が計画されたり。それは頓挫しそうです。また、日本はパチンコや競輪競馬など、世界有数のギャンブル大国なのに、ギャンブル依存症対策が考えられないままに、大阪では万博とカジノがセットで計画がなされるなどです。このおきざりにされた出来事や哀しみを、忘れてはいけないと思うのです。
 毎日新聞の日曜くらぶに掲載されていたコラムに、「共感力と想像力」とありました。そのとおり!と思います。これこそが、今の時代、かけがえのない、とても大切なことだと思います。
 コラムを紹介します。

 
(前略)共感力や想像力というのは、日常生活の中で軽視されがちだが、困難な状況の中を生きぬくためにとても大切なのではないだろうか、そして、気になるのはこうした力が明らかに不足している人が増えているような気がする。というのは、私は社会人対象の講座を開きその中でワークショップを行ったりする時にそれに気づくのだ。ワークショップで、例題を出し、それを自分なりに解いてもらうのだが、ちょっとした困難やトラブルをどうのり切るかというテーマの例題で、夫とのトラブルを出したところ、「自分は結婚していないからわかりません」と答える人がいる。あるいは、仕事場での同僚とのトラブルをテーマにすると、「私は仕事をしていないし、その予定もないからそういうトラブルには出合わない」と答える人もいる。これはワークショップであり、自分がその立場になったと想像してみたり、そんな状況の人はどんなふうにすればいいか、を考えよう、という趣旨を前提に行っているにもかかわらず、である。違う立場や環境の人の気持ちを想像しようとしないと共感はできない。また人生には想定外のことが起きるものだが、想定外のことは起こらない、という前提のもとでも想像力は発揮できない。考え方の違う人の視点を想像したりすることは自分のものの見方の幅を拡げ人生の困難をのり切るために不可欠なのだが。(心療内科医 海原純子)
        毎日新聞2019年1月20日 日曜くらぶ 新・心のサプリ より


日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2019/1/28