第29回吃音親子サマーキャンプ8 「人間」になる場

おわり全体 前回の報告で終わりと思っていたのですが、後日行われた打ち上げ・反省会の様子をお知らせして、今年のサマーキャンプ報告を閉じることにします。
 温かく、楽しく、豊かな空間だったサマーキャンプを終え、参加者はそれぞれまた自分の世界に帰っていきます。見送りに行って、バスが小さくなると、さみしくなります。同時に、また来年!元気で会いたいと祈るような気持ちにもなります。現実は厳しい、でも、荒神山が待ってるよ、そんな気持ちです。

 参加者からぽつぽつと感想が送られてきます。今回は、メールアドレスをお伝えしたので、メールで感想を寄せて下さった方も少なくありませんでした。

 9月15日、土曜日の午後5時半、スタッフの打ち上げ・反省会が始まりました。どうしても、大阪近郊の人だけになってしまい、申し訳ないのですが、今年も15人が集まりました。前回のブログで紹介したサマーキャンプ卒業生が東京から参加してくれました。関東地方のスタッフで、この打ち上げ・反省会に一度でいいから参加したいという声はよく聞きます。仕事をちもちながらなので、難しいのですが、チャンスがあればぜひ。

 少しおなかが大きくなった頃から、ひとりひとりのスピーチが始まります。ひとりがしゃべる時間も長いけれど、それに対する質問やつっこみがあるので、ますます長くなります。同じグループだった子どもの名前が書いてある資料を持ってくる人、ほかのグループの子どもの名前が出たとき分かるように、またプログラムの流れが分かるようにと、しおりをもってくる人など、みんな用意周到です。終わったのは、午後9時過ぎ。今年もロングランでした。
 サマーキャンプは、事前レッスンに始まり、打ち上げ・反省会で終わると誰かが言っていました。出た話、少し紹介します。

打ち上げ1打ち上げ2・久しぶりに参加した。参加者がみんな協力的で、楽だなあと思った。
・2回目の参加で少し余裕があった。自分のどもりとも向き合う時間になった。参加するにあたって、子どもたちとできるだけ遊ぼうという目標を立てたが、たくさん遊ぶことができ、目標を達成できた。
・昨年参加した子どもたちの大きな変化がうれしかった。この1年、どんな生活をしていたのだろうと想像している。劇も、子どもたちのアイデアを取り入れて作っていった。柔軟性があって、子どもの力はすごい。
・今年、初めて子どもたちの話し合いのグループに入った。高校生の話を直接聞ける機会なんてないので貴重な時間だった。自分のことも思い出していた。きょうだいは、思いっきり遊んで楽しんでいるが、どもる子たちが話しているとき、じっと待っていてくれる。その姿がうれしかった。
・事前レッスンで、渡辺貴裕さんが子どもたちとのエクササイズをいろいろと教えてくれるのが、当日、とても役に立つ。サマーキャンプは、大事にしたい空間だ。
・14年ぶりに参加した。初参加みたいなものだった。事前レッスンから参加し、今までしてこなかった劇でセリフを思い切り言うこと、演じることが気持ちよかった。
・スタッフとして4回目の参加。初めて子どもたちの話し合いに参加した。何を話したらいいのかと戸惑いがあったけれど、子どもたちはきちんと考え、語り、行動していた。すごいと思った。来年は、母も姉もスタッフとして参加したいと言っている。
・中学生の話し合いの時間が印象的。子どもたちが、自分のことを自分のことばで語るのを聞いていると、スタッフも、自分のことを語りたくなる。いつのまにか、スタッフが自分のことを語っていた。今まで一緒に活動しているのに、知らない一面も聞けた。これが対等性なんだと実感した。
・スタッフは年々高齢化していっているけれど、卒業生がたくさん参加してくれて、ありがたい。事前レッスンに参加しているスタッフがグループに何人かいるので、劇の練習はとてもやりやすい。やはり、サマーキャンプは、事前レッスンからだ。
・私にとって、とても大事な3日間。どもりの魅力を味わうことができ、ますますどもりのとりこになってしまった。参加者ひとりひとりが、悩み、ここで出会い、そして変化していく。その凝縮された時間をともに生きているのがうれしい。3日目の卒業式やふりかえりでは、いつも泣いてしまう。今年の卒業式も、卒業生に合わせた形ですすんでいき、違和感は全くなかった。それがとてもよかった。
・長く、きょうだいを担当している。保護者から、「きょうだいをみてもらえるので、本当に助かる」と言われ、貢献感を味わうことができた。
・このサマーキャンプの場は、本当に不思議な空間だ。気持ちのきれいな人間になれるというか、人間になれるというか。私にとって、サマーキャンプは、「人間になる」場だと思っている。他のスタッフのやさしい関わりもすごいなと思う。
・ラグビーの神戸製鋼の平尾誠二が、「ラグビーは究極の遊びだ」と言った。それと同じように、僕は、どもる人のセルフヘルプグループ活動や、このサマーキャンプは、究極の遊びだと思っている。楽しいからする。楽しいことをしていると、人は幸せになれる。幸せなどもりだと思う。
・来年は、30回。何か記念になることをしたいなあ。これまでの参加者は、今、どうしているのだろう。その人にとって、サマーキャンプはどんな意味をもっていたのだろう。そんなことを聞いてみたい気がする。

 簡単なメモだけを頼りに参加者の感想を拾ってみました。この10倍以上もしゃべっていました。いい仲間たちだと心から思います。いい仲間たちと、楽しい活動ができる、これほど幸せなことはありません。
 吃音の夏は、こうして終わり、次は吃音の秋。各地でのキャンプロードが続きます。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2018/10/7