吃音親子サマーキャンプ2 スタッフの芝居・スタッフ会議

 芝居の事前レッスンに参加したスタッフにとって、初日のあわただしさはかなりのものです。出会いの広場が終わってすぐ、学習室に集合し、夕食前にリハーサルを半分。残りの後半は、夕食を短く切り上げて話し合いの前にリハーサルのつづきをします。
 事前レッスンの様子を大阪スタタリングプロジェクトの井上詠治さんが動画配信してくれているので、それぞれ復習してきているのですが、やはり動きや、出入り、人とのからみは実際に演じてみないと感覚がつかめません。小走りに移動し、リハーサルを終えて、話し合いの部屋に戻っていきました。

 一回目の話し合いが終わって、午後8時、全員が学習室に集合します。ここで、今年の芝居のスタッフによる上演が始まります。「いい芝居になるかどうかは、観客次第!」なんてことを言ってスタートします。

サマキャン 見本の劇1サマキャン 見本の劇2サマキャン 見本の劇3サマキャン 見本の劇4

 どもる大人がどもりながら芝居をする、その姿を間近で、どもる子どもも親もことばの教室の担当者や言語聴覚士も見る、この時間のもつ意味は大きいと思います。「大人になったら治るのではないか」と思っていた子どももいますが、そうではない現実を見ることになります。でも、それは悲惨なことではなく、あれだけどもりながら、いきいきと楽しそうに演じているということは、どもっていても大丈夫とことばに出して言わなくても伝わるのではないでしょうか。
 子どもたちは、スタッフの芝居を見て、自分はあの役をしたいな、この役がおもしろそうと、自分の姿を重ね合わせて見ています。親たちも、芝居に出ていないスタッフも、楽しそうに見てくれていました。でも、誰よりも楽しんでいるのは、演じているスタッフです。

 思えば、小学2年生の秋、学芸会でせりふのある役を外されてから66年。僕がどもりに悩むようになったきっかけの学芸会。もう十分に、その悔しさは取り戻せたように思います。

 長い一日が終わり、午後9時、スタッフが学習室に集まります。
 沖縄から関東地方から、全国から集まることばの教室の教師、言語聴覚士、大阪スタタリングプロジェクトのどもる人たちでつくるスタッフの輪は、圧巻です。

サマキャン スタッフ会議1サマキャン スタッフ会議2
 話し合いで出てきた話題、生活の中で気になったこと、いろいろなことが出されます。この時間、いつも、子どもたちのことをみんながよく見ていてくれるなあと感心します。
 そんな細やかな気遣いのできるスタッフが集まり、お互いに信頼し、温かいやわらかい雰囲気の中で、サマーキャンプは進行していっているのを感じています。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2018/9/25