性能のいい翻訳機能を活かそう
2ヶ月半も前のことになってしまい、記憶もあやふやになってしまいましたが、6月16・17日、第3回新・吃音ショートコースを開催しました。
参加者は、どもる人、ことばの教室の担当者、通常の学級の教員などで、千葉、東京、神奈川、埼玉、愛知、大阪、兵庫などから、21名でした。具体的なプログラムが決まっていない2日間の最初のセッションで、自己紹介をしながら、参加した動機と、2日間でしてみたいことを出していきました。
○命の洗濯に来た。しんどい毎日を過ごしているので、少し自分を休めたい。
○退職して2年目。「魂の喜ぶことをしなさい」と言われたが、ウキウキワクワク感がない。何がしたいのかもよく分からない。自分と向き合うことの大切さは、どもりがあろうとなかろうと同じだと思う。何かをみつけたくて参加した。
○ことばの教室の担当になって2年目。子どもと何をしたらいいのか探したくて参加した。
それぞれの話が進む中、7人目の方が「人との上手な受け答えを学びたい」と参加動機を語り始めました。
「私は自分がどもるせいか、ポンポンと言ってくる人は苦手。ことばがきつくて、ひねくって言われるのが好きではない。そういう言い方をする人にうまく返せない。生活が充実していたときは、どもっていたかもしれないけれど、気にしなかったが、人間関係で悩んでいるときは、吃音がもたげてくる。一喜一憂しないようにしたいとは思っているが、気になってしまう。ちょっとまちがったときなどに皮肉を言われると、そんなことも知らないのかと馬鹿にされているみたいに感じてしまう」
職種が変わり、5ヶ月目くらいのことだったそうです。「この場合、このように処理するのですか」と念押しのつもりで言ったとき、相手は、「か?! 今頃、そんなこと、言うのか。アホなこと、言うな。そんなこと知らんかったんか」と返してきたそうです。ポンポンとそう言われて、何も返すことばがみつからなかったと言います。
相手が言ったことばをどのように受け止めたのかを考えました。心の中のつぶやきです。
・そこまで言わなくてもいいやろ。
・他の人がいる前で言わなくてもいいのでは。
・もっと別の言い方があるんじゃないのか。
・これからも、間違ったら、ここまで言われるのか。
・人の失敗に対して厳しい人なんだなあ。
このように受け止め、つぶやいてしまうと、自分がしんどくなります。そんなとき、どうしたらよかったのでしょう。みんなで考えました。
「ですよねえ」と笑って同意するという意見には、みんな大笑いをしました。こう返すと、きっと相手はそれ以上何も言ってこないでしょう。
苦手な人と仲良くする必要はないと思います。まして友だちになることはありません。でも、社会生活をしている以上、それなりにうまくかいくぐる術は身につけておくといいと思います。サバイバル術です。
具体的には、演技をしたらいいと思うのです。幸い、どもる僕たちは、どもりそうだなと思ったら瞬時にどもらないことばを探す「言い換え」ということをしてきました。技といってもいいくらい瞬時に行うことができます。そんな、性能がいい翻訳機能を持っています。嫌な相手、苦手な相手からのことばをそのまま受け取らず、自分が傷つかないように、こういうふうに言ってくれているんだと翻訳して受け取るのです。普段から練習しておかないと難しいかもしれません。自分の身を守るのは、自分です。相手や相手のことばが、自分を傷つけるのではなく、自分が自分を傷つけていることがよくあります。さきほどの例でも、心の中でつぶやいたことが、自分を傷つけているのではないでしょうか。
全員の自己紹介をするつもりだったのですが、すぐに脱線してしまい、ひとつのワークをしてしまったようでした。そんな自由度のある新・吃音ショートコースです。
今回の新・吃音ショートコース、「自分の身は自分で守る」「性能のいい翻訳機能をもつ」が、キーワードのひとつになりました。
日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2018/8/30
2ヶ月半も前のことになってしまい、記憶もあやふやになってしまいましたが、6月16・17日、第3回新・吃音ショートコースを開催しました。
参加者は、どもる人、ことばの教室の担当者、通常の学級の教員などで、千葉、東京、神奈川、埼玉、愛知、大阪、兵庫などから、21名でした。具体的なプログラムが決まっていない2日間の最初のセッションで、自己紹介をしながら、参加した動機と、2日間でしてみたいことを出していきました。
○命の洗濯に来た。しんどい毎日を過ごしているので、少し自分を休めたい。
○退職して2年目。「魂の喜ぶことをしなさい」と言われたが、ウキウキワクワク感がない。何がしたいのかもよく分からない。自分と向き合うことの大切さは、どもりがあろうとなかろうと同じだと思う。何かをみつけたくて参加した。
○ことばの教室の担当になって2年目。子どもと何をしたらいいのか探したくて参加した。
それぞれの話が進む中、7人目の方が「人との上手な受け答えを学びたい」と参加動機を語り始めました。
「私は自分がどもるせいか、ポンポンと言ってくる人は苦手。ことばがきつくて、ひねくって言われるのが好きではない。そういう言い方をする人にうまく返せない。生活が充実していたときは、どもっていたかもしれないけれど、気にしなかったが、人間関係で悩んでいるときは、吃音がもたげてくる。一喜一憂しないようにしたいとは思っているが、気になってしまう。ちょっとまちがったときなどに皮肉を言われると、そんなことも知らないのかと馬鹿にされているみたいに感じてしまう」
職種が変わり、5ヶ月目くらいのことだったそうです。「この場合、このように処理するのですか」と念押しのつもりで言ったとき、相手は、「か?! 今頃、そんなこと、言うのか。アホなこと、言うな。そんなこと知らんかったんか」と返してきたそうです。ポンポンとそう言われて、何も返すことばがみつからなかったと言います。
相手が言ったことばをどのように受け止めたのかを考えました。心の中のつぶやきです。
・そこまで言わなくてもいいやろ。
・他の人がいる前で言わなくてもいいのでは。
・もっと別の言い方があるんじゃないのか。
・これからも、間違ったら、ここまで言われるのか。
・人の失敗に対して厳しい人なんだなあ。
このように受け止め、つぶやいてしまうと、自分がしんどくなります。そんなとき、どうしたらよかったのでしょう。みんなで考えました。
「ですよねえ」と笑って同意するという意見には、みんな大笑いをしました。こう返すと、きっと相手はそれ以上何も言ってこないでしょう。
苦手な人と仲良くする必要はないと思います。まして友だちになることはありません。でも、社会生活をしている以上、それなりにうまくかいくぐる術は身につけておくといいと思います。サバイバル術です。
具体的には、演技をしたらいいと思うのです。幸い、どもる僕たちは、どもりそうだなと思ったら瞬時にどもらないことばを探す「言い換え」ということをしてきました。技といってもいいくらい瞬時に行うことができます。そんな、性能がいい翻訳機能を持っています。嫌な相手、苦手な相手からのことばをそのまま受け取らず、自分が傷つかないように、こういうふうに言ってくれているんだと翻訳して受け取るのです。普段から練習しておかないと難しいかもしれません。自分の身を守るのは、自分です。相手や相手のことばが、自分を傷つけるのではなく、自分が自分を傷つけていることがよくあります。さきほどの例でも、心の中でつぶやいたことが、自分を傷つけているのではないでしょうか。
全員の自己紹介をするつもりだったのですが、すぐに脱線してしまい、ひとつのワークをしてしまったようでした。そんな自由度のある新・吃音ショートコースです。
今回の新・吃音ショートコース、「自分の身は自分で守る」「性能のいい翻訳機能をもつ」が、キーワードのひとつになりました。
日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2018/8/30