第2回 新・吃音ショートコースに参加しての感想

 僕はどもる人のセルフヘルプグループ言友会を創立してから52年という長い間、多くの人たちと「哲学的対話」を続けてきたのだと、最近実感できるようになりました。
 「吃音を治す・改善する」から脱却できないアメリカ言語病理学は、今、僕たちが到達した地点に依然として立てていないからです。それを会を創立して5年ほどで、今の地点に立ち、考えを深めることができたのは、僕たちの話し合いが「哲学的対話」であったからだと思うのです。
 単なる雑談、議論、話し合いより、その人の人生、吃音の本質に迫る対話が、僕は本当に好きです。だから、52年も続いて、これからも続いていくのでしょう。


 だから、今回の新・吃音ショートコースは僕にとって楽しく、充実した時間でした。それが僕だけの独りよがりではなく、参加した人たちも共有して下さっていたことは、最後のセッションの振り返りでよくわかりました。参加者が書いて下さった感想の一部を紹介します。

     感想

 2日間ゆったりとした時間でいろいろなメニューの勉強ができてよかった。参加者一人ひとりの意見や感想を聞けて、自分の考えの幅が広がりました。特にふたりの当事者研究では、自分の狭い考え(固まった考え)に気づくことができました。伊藤さんが言われた「何が正しいかじゃなくて、どう考えることが自分を幸せにするかが大事」ということは、自分でもそんな考え方ができたらいいなと思いました。自分のこうあるべきだという考えを改めて柔軟な考えができるようにしていきたい。ポジティヴ心理学を詳しく学びたくなりました。  


 ちょうどいい人数に、ちょうどいいスケジュール、せわしなく進んだり、のんびり考えたり、他の人の問題やテーマ、発言が自分の中でリンクする瞬間がたまらなく心地よかったです。1日目の昼の時間は残念ながら参加できなかったが、そのときのことを話すみんなのことばや表情を感じることで、自分もその場に居たかのような錯覚をしました。みんなの悩みは自分の悩み、自分の悩みはみんなの悩み、人と自分は違うんだ、誰も分かってくれないという思いがありましたが、実は地続きでつながっているんだなと思いました。ボイストレーニングでは久しぶりにのびのびと声を出し、吹っ切ることができ、新しい自分を発見しました。新・吃音ショートコースはかけがえのないものだと思いました。


 とても濃密な2日間でした。これまで何度も当事者研究会には参加していたのですが、初めて本格的な当事者研究に出会ったような気持ちになりました。個人的な当事者研究会は私自身がずっと運営していたのですが、回復(リカバリー)を志向しているというよりも「吃音とは何なのかを知りたい」(医学的なことばではなくて、当事者のことばで語りたい)とが強かったので、また、参加者も、社会モデル的なニーズ表明のサポートのための研究の色合いが強いことが多いので、ぐるぐるとした研究になることが多かったことに気づかされました。僕はまだ弱くて「弱さを公開する強さ」が持てず、トラウマになっているエピソードにもアクセスできないこともあります。今回もあまり自分の経験が語れませんでしたが、少しだけ僕自身が「変わろうとしている」瞬間に連れていってもらえたと感じました。当事者研究に参加するとはこういうことをするんだなと、頭をなぐられたような気持ちです。うまくことばにできませんが、本当にありがとうございました。


 この2日間、とても貴重な体験でした。出会えた皆さんには、問題を一緒に考えていただいて感謝しています。自分には本を読む習慣を身につけることが大事だと改めて思いました。本日、本を購入しました。今日からは、今までよりも楽に読めると思います。楽しみです。今日のことは一生忘れないように、地元に帰っても生活しようと思います。このショートコース参加された方の「どもりながらでも話をする」姿に励まされました。


 職場での人間関係の悩みで、私もよく陥りがちな非論理的思考の解決方法が聞けてよかったです。「正当なことの要求」と「自分の幸福」が一致しないのは、自分だけではなく、みんなにもあるのだと分かってほっとしました。また、「人に理解を求めてはいけない」は、今回のヒットでした。「治す努力の否定」で「がんばるところはがんばる。諦めるところは諦めて、エネルギーの使い方を考える」は、そろそろ何ごとにも全力投球がしんどくなってきているので、いい考えだと改めて思いました。日本語のレッスン、楽しかったです。声を出せてよかったです。


 これまでも伊藤さんがインタビューしたり対談をしたりしているのをたくさん見てきました。今回、改めて二人の話を聞いたり整理したりする聞き方は参考になれました。相手が気持ちよく話している様子がありました。そして、少しずつ笑顔になっていました。問題や課題を一度出して整理する様子が見られてよかったです。私も、ことばの教室で子どもたちとの対話で笑顔になっていく様子を大事にしたいと思います。今回、私の中で子どもとできるワーク探しをしていました。ぜひ、ボイストレーニング、日本語のレッスンをしてみたいと思います。気持ちよく声を出す、自分の声を知ることをやってみたいと思います。私自身も呼吸をとめて息苦しく仕事をしていたようです。気持ちよく帰れます。

日本吃音臨床研究会会長 伊藤伸二 2017/12/22