5拍子の福音 うれしい後日談

4月10日のブログで、大阪吃音教室の今年度の開講式のことを書きました。舞台裏の様子を「マンスリーリポート」で見てから、毎日放送のラジオドラマ「5拍子の福音」を参加者のみんなで聞いて、その感想を共有し合った内容でした。ディレクターの島修一さんの真摯な、誠実な姿勢がとても好感のもてるもので、いい時間を過ごしました。その島さんから、昨日、うれしいメールが届きました。島さんの、「この喜びを共有したくて…」というところに、なんとも言いようのないうれしさを感じました。

MBSラジオ島です。

ラジオドラマ「5拍子の福音」制作の際はお世話になり、本当にありがとうございました。
おかげさまで満足のいく作品が完成し、無事に放送を終えることができました。
ホッとしておりましたら、うれしいお知らせが飛び込んでまいりました。
放送文化の質的な向上を狙って設立された放送批評懇談会という放送業界において権威ある団体があるのですが、その放送批評懇談会が表彰する「ギャラクシー賞」という、これまた権威ある賞があります。
この『ギャラクシー賞』の2016年度ラジオ部門の入賞作品に「5拍子の福音」が選ばれました!

http://www.houkon.jp/galaxy/54nyushou.html

2016年度に放送されたラジオ番組の中から、上位8本が選ばれるのですが、その8本の中に入ったということです。この後、6月1日に東京・渋谷で、ギャラクシー賞の式典があり、その場で、8本の中から、大賞1本、優秀賞3本、選奨4本が発表されます。(つまり、選奨以上の賞の受賞が決定しているということです)
ご協力いただいた作品が、高評価を得て、権威ある賞を受賞できたことは、本当に皆さまのおかげと感謝しております。また6月1日の最終結果もお伝えいたしますが、取り急ぎ、この喜びを共有したいとご連絡させていただきました。引き続き、よろしくお願いいたします。 本当にありがとうございました!

MBSラジオ 島 修一

島さん

うれしい報告、ありがとうございます。
大阪吃音教室の今年度の開講式の時、島さんから送っていただいた音源で、25名ほどの参加者と聞き、その感想を共有しました。私など50年以上ラジオドラマは聞いていなかったので、とても新鮮で、みんなと共有したいい時間でした。
それはブログで書きましたが、このような権威ある賞に入賞とは、とてもうれしいです。
最初に脚本が送られてきた流れが、この結果になるとは、感無量です。
島さんの、ドラマ制作に対する誠実さが、作者、出演者、音楽や効果音のスタッフ、みなさんのチームワークを引き出したのだと思います。
吃音に対して、分からないところはきちんと私に質問して下さり、私の意見をすべて反映させて下さいました。吃音に対しての誠実さに対しても、あらためて感謝します。
おめでとうございます。6月1日の表彰式楽しみですね。
うれしいご連絡ありがとうございました。
伊藤伸二

その後、大阪吃音教室の仲間の西田さんの感想が届きました。

西田さんの感想
ラジオドラマ「5拍子の福音」の再放送を、「radiko.jp」で聴きました。結末が分かっていて安心して聞け、その分、脚本の途中に設けてある伏線や、各場面の細かい描写に目が行きました。改めて、見事な脚本だと感じました。

母親、父親、妹の描き方が、分かりやすすぎるほど典型的なのですが、吃音という複雑な現象の理解を助ける効果を果たしていると思います。
吃音独特の苦悩も、短い時間の中で詳しく描かれています。それ以上に、障害や病気や、そのほか当事者が抱える様々な課題が、家族や周囲をどんな風に巻き込むものなのかが、十分に描かれていると感じました。
これなら、吃音を知らない人でも、別の課題を抱えた、自分や知人のことに引きつけて考えることができます。

登場人物のうち、もう一人のどもる人、相手役の青年のお兄さんの描かれ方にも納得しました。
コンクール応募時の原作では、吃音のせいで溺死した人物だったと聞いています。それが大きく変わり、(ネタバレになるので詳しくは書きませんが、)本当に良かったと思います。修正前の原作では、相手役の青年の楽天的で一見能天気な感じと、余りにも不釣り合いでした。修正後の青年のお兄さん、個人的感想を言うと少々カッコ良過ぎるのですが、単発のラジオドラマの一登場人物ですから、これくらいでちょうど良いのかと思います。
ところで、主人公の女性が終盤、自分の伝えたいことを語るとき、何だか前をしっかり見て話しているように聞こえました。
スタジオの収録では当然、声優さんは、主人公が深い悩みの中に陥っている前半も、吹っ切れた思いを獲得した終盤も、マイクを前にしてそれほど変わらない姿勢で声を吹き込んでいるのだと思うのです。
それが、聴いていると、前半は他人の視線を避けて俯いて話す主人公が、終盤には相手をしっかり見て話す主人公が見える気がしました。


1月の「The Way We Talk」での一ノ瀬かおるさんのことばに、「良い作品に出合うと、作者とおしゃべりしたくなる」というのがあります。
私は「5拍子の福音」を聴いて、「良い作品は例会の教材で使い倒したくなる」という思いが湧いてきました。
交流分析で言えば、CPやNPの功罪を考えるのにも適していますし、人がAC優位の時にどんな風にどんなことばを発するかの事例が豊富です。
アドラー心理学でも、目的論のこと、課題の分離ほか、幾つかの角度から取り上げることが可能です。
論理療法や認知行動療法、アサーションでも、分かりやすい教材に使えそうです。
場面を区切ってサイコドラマをやって、更に役ごとに湧き上がってくる台詞を付け加える、というのもやってみたくなりました。

日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2017/04/29