吃音親子サマーキャンプ打ち上げ
2016年9月17日(土)17:00〜20:00
13名参加
吃音親子サマーキャンプは、7月の劇の稽古、上演のための事前レッスンに始まり、9月の打ち上げで終わります。2ヶ月のロングランです。スタッフ全員に、キャンプのお礼と打ち上げの案内を送りますが、「一度は、参加したいと思っているが、遠くて残念…」と書いて下さる人が多いです。沖縄や、鹿児島などの九州勢から関東地方から参加するスタッフからです。
今回、大阪、兵庫を中心に13名が集まりました。岡山からかけつけてくれた人もいます。いつもの中国料理店で食事をしなかがら、というより食事もそこそこに一人一人が自分にとってのキャンプを振り返ります。自分の担当する場面以外の子どものようすなどが聞けて、とても楽しい、幸せな時間です。子どもたちを、子どもの物語に真剣に向き合っているからこそ、語れる子どもたちのエビソード。こんな仲間たちだから、参加者全員が、いい雰囲気の、温かいキャンプと、口々に言うのだと思います。いくつかの発言を紹介します。
〇〇さん
初めての参加。サマーキャンプの他に、演劇の事前レッスン、島根での全難言全国大会、吃音講習会に参加し、濃い時間を過ごした。本音が言える仲間だと思った。
サマーキャンプで心に残っているのは、小6・中1の話し合い。自己紹介をしようということになったとき、I君が「自分のいいところを言おう」と声をかけた。すると、「普通、そういうことは言わんやろ」という声が上がったが、「でも、ここはな、言っていいところなんやで」となり、みんなひとりひとりが自分のいいところ、得意なことなどを話していった。こんなことが言える雰囲気がすてきだった。
S君が発表したくて手を挙げるが、先生は当ててくれないという不満を出した。これに対して、つい教師サイドの発言をしたけれど、教師ではなく、人として素で答えられたらよかったなと思っている。毎日新聞の「吃音で差別されている人6割」の記事の中での、吃音改善と吃音克服をごっちゃにしているとの意見が出され、その違いについてきちんと説明し、それに対して抗議というか、意見を投書しようという話になった。小学生が投書するから意味があるだうという子どもたちにびっくりし、すごいなと思った。劇でも、ブロックがひどくてせりふがいえない子に対して、みんながやさしく待っていた。Wさんの丁寧なかかわりもあった。学校に戻って、ことばの教室の同僚の教師にこれらの話をすると、「吃音の子は、かしこいからね」とあっさり言われてしまい、がっかり。子どもたちが真剣に考え、話し合っているからできることなのに。
〇〇さん
サマーキャンプを卒業し、今回初めてスタッフとして参加した。一番よかったのは、スタッフ会議に参加できたこと。今までは、年の近い人とばかりで、吃音の話をしてきたけれど、年のかなり違うスタッフと吃音の話ができてよかった。また、高校3年生の初参加の子から、僕が今大学で目指している、言語聴覚士のことを聞かれ、相談にのって、いろいろ話した。僕も、高校3年のとき、サマーキャンプに参加して、将来言語聴覚士になろうという気持ちになった。彼女と、話をして、改めて、言語聴覚士になりたいという気持ちが強くなった。彼女は吃音に悩んでいながら、サマーキャンプ直前まで、親にも吃音の話をしてこなかったという。親にすら話せない子がいるとしたら、そういう人たちの力になりたいと思った。
〇〇さん
年々、3日間が楽になってきている。サマキャン卒業生がスタッフとして参加してくれていることが関係している。たとえば、ここにいるN君も、小学2年生のときは、言うこときかんかったし、蛍光灯も割ったし。なのに、今、スタッフとしてがんばってくれていた。沖縄、兵庫からの参加者が比較的多かった。また、初参加の人が初めは不安そうにしているが、すぐに打ち解けているのが印象的だ。終わってから、どもる人や保護者の集まりがあったが、そこで、参加者の感想を聞くことができた。3歳の妹が参加していたが、どもる子どもの妹として参加していたが、本人も、どもる子だった。母親は、妹もどもることをなかなか受け入れることができなかったが、キャンプで、兄弟姉妹を世話してくれる女子のスタッフの姿を見て、こういう女の子になってくれたらいいんだと思え、受け入れることができるよになったと話していた。来年は、どもる子どもとしてきょうだいで参加するだろう。
〇〇さん
芝居の練習は、これまでは僕が中心に指導していたが、Fさん、Tさんが積極的に関わってくれたことがうれしかった。事前レッスンに参加している人が4人だった。Fさんが、ウォーミングアップですることや歌詞カードを準備してくれて、リードしてくれた。事前レッスンには参加していないけれど、僕たちが竹内敏晴さんから受けてきた、からだとことばのレッスンができる人が、スタッフの中には配置されている。事前レッスンに参加していなくても、されらの人と一緒にできるのがありがたい。
〇〇さん
ほめられたら、子どもももちろん大人もうれしい。思ったことは伝えないといけない。この二つを強く思った。Nさんに何かを頼んだとき、「はい、わかりました」と言ってすぐに動いてくれた。初々しくて、そのことをNさんの母に伝えることができたら、母が喜んでいた。思ったことは伝えなくてはいけないと思ったことだ。スタッフの部屋に、Kさんが来て、話をしていた。それに対して、若いスタッフがしっかり聞いて、レスポンスし、アドバイスしていた。聞いていると、「そんな、うまくいくはずがない」と思えるようなことだったけれど、Kさんにとっては、しっかり受け止めてもらえたという経験にはなっていた。小1から知っているが、成長しているのが分かってうれしかった。劇は、Kさんがいてくれて安心できた。M君とYさんの2人の息がぴったりあっていて、ほほえましかった。スタッフミーティングのときに聞いたYさんと全く違う姿だった。最後、来年の吃音講習会のことを宣伝したのを聞いて、「私も参加していいのかな」と言っていた。行きたいという積極的な気持ちになってくれたとうれしかった。劇の役は、自分がしたいという役をしてもらうのが一番。その調整ではなく、ダブルキャストやトリプルキャストになったとき、どう劇の場面を工夫していくか、調整していくか、それを考えた方がいい。それを考えるのも楽しいようだ。
〇〇さん
初日の深夜に到着し、実質2日目から参加した。劇の中で、僕も役に立ちたいなあと思うけれど、事前レッスンに参加していないので、なかなか動けない。来年は休みをとって、ぜひ事前レッスンから参加したい。役を決めるとき、〇君に、「やってみたら」と背中を押してみた。初めはしぶっていたが、やりますと言い、後は見事に、2つの役をこなしていた。すごいと思った。ウォークラリーは、去年、道を間違えたので、不安だったが、みんなに確認しながら行けて、よかった。僕にとっては、なくてはならない夏のイベント。
〇〇さん
若い人が増えてきた。卒業生スタッフは、キャンプの段取りが分かっているから、やりやすい。劇で、ブロックのきつい子に、Wさんが丁寧にかかわっていた。無理じゃないかと思われるくらいきつかったのに、だんだん出るようになり、本番では、せりふが言えていた。不思議で、マジックのようだった。来年、キャンプのドキュメンタリーを撮りたいと思っている。ぜひ、記録として残したい。
〇〇さん
劇で、与えられたものをするのではなく、自分たちでいいものにしようという気持ちがあって、提案したり、工夫したりしていたのがよかった。アドリブも考えていた。そんな前向きに考える場にいることができてよかった。
〇〇さん
子どもの話し合いに初めて参加した。小2で、2人だった。まねされたとき、どう伝えるかという話題になった。Y君は、そういうことがあって、自分で先生に言ったと話していたが、D君は、まねされたことはないと言っていた。Y君は、小1のとき、まねされたことがあって、自分で話したそうだ。先生に言うのが一番早いと判断したからだとのこと。その話を聞いていたD君が、2日目に、「実は、僕も、まねされたことがあって…」と話し始めた。劇では、コマドリの役をしたいと言った子は、バレーをしていたからで、それが生かせると思ったから。自分の得意なことをみんなの前で披露したいというのは、いいなあと思った。最後のふりかえりで、どもる子どもの妹の、兄を心配していて、まくいったことを自分のことのように、安心して喜んでいたという作文に感動した。そんなことを考えていたのかと胸が熱くなった。どもる子ども本人だけでなく、きょうだいで参加することの意義を思った。
〇〇さん
きょうだいグループを担当している。今回、新しいスタッフを叱ってしまった。お風呂に入るとき、子どもたちだけで、入らせていると知り、「なにかあったら、どうするの。今、みんなは話し合いの時間で、私たちきょうだいグループは、お風呂に入っているけれど、プロクラム中なんだから」と。ただ、遊ばせているだけだと思っていたスタッフがいたけれど、そうではないことを知ってもらえてよかった。親が安心して、学習会や話し合いに参加できるよう、きょうだいを見ていくことで、私自身も、きょうだいグループの意義がようやく分かってきた。バレーをしてきた子に、コマドリをしたいと言ったとき、「やったら」とすめた。得意なことをみんなの前で披露したいと思い、それができる場なんだと思った。
〇〇さん
ゆっくりキャンプを味わうことができた。劇も話が分かりやすかったので、パートには分けず、みんなで通して練習できた。二人の高校生が、普段なら出会うことのないまったく生活も、性格も違う二人が、いい味を出して、劇の練習をひっぱっていってくれていた。息子が、カレーを食べた後、遊んでいる姿を見て、うれしかった。ずっとキャンプに参加する気持ちでいるらしい。姉が来年卒業なので、それでおしまいなのだが。父は参加するけど。サマーキャンプがいつまであるのかと聞くのて、「伊藤さんが生きているうち」と言うと、「死んだら」「そこで終わりだな」と言うと、「Kさんがやったらいいよ」と言っていた。S君の父親が、今回は、父親グループのみんなと談笑していたのがよかった。
日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2016年9月25日