第27回吃音親子サマーキャンプ関連です。

 いい、どもる大人に出会ってほしい


 どもる子どもには、いいどもる大人に出会ってほしい。ことばの教室の先生や、言語聴覚士にも、いいどもる大人に出会ってほしい。僕は常にそう願っています。
 どもる成人なら、誰でもいいと言うわけではありません。吃音の悲しい体験、つらい思いだけを語る人には会ってほしくありません。吃音の否定的な物語を、子どもたちに植え付けたくないからです。しかし、僕たちの仲間も、悲しい、つらい体験をしていないわけではありません。そのような経験をし、それを率直に語りながら、吃音に向き合い、吃音と共に豊かな道を歩き始めた人に出会ってほしいのです。

 先だって行われた臨床家のための講習会でもことばの教室の先生が「いい、成人のどもる人にたくさん出会えてよかったと」と言っていました。メンター(いい先輩、師匠)として、子どもに生きたモデルとして存在してほしいからです。「手本」ではなく、あくまでひとつのいい「見本」としてです。

 だから、吃音親子サマーキャンプにスタッフとして加わる成人のどもる人には、厳しい条件を設けています。キャンプ前に、どもる成人からの申し込みはたくさんあります。特に大学生が、自分の研究を含めて参加を打診してきます。それらは、すべて断っています。私たちの仲間、大阪スタタリングプロジェクトの人でも、誰でもいいと言うわけではなく、大阪吃音教室によく参加していることと、その人の発言や書く内容を、僕たちはみています。そして、少なくとも次の3冊の本をしっかりと読んで、僕たちの考えを理解している人に限ります。
   屬匹發觀へ、今伝えたいこと」 ◆ 嵜董Χ技奸Ω生貭鯵仍里使える吃音ワークブック」(解放出版社) 両親指導の手引き書「吃音と共に豊かに生きる」(NPO法人ことばをはぐくむ会)
 今年もたくさんのどもる人がスタッフとして参加しました。その一人、藤岡千恵さんからの、大阪の仲間へ宛てたメールを紹介します。

伊藤さん、溝口さん、運営委員のみなさん

藤岡です。8月19日から21日の2泊3日のサマキャンが終わりました。
今年もサマキャンに参加できたこと、とても幸せでした。

 私は今回、小学生の話し合いに参加しましたが、自分の吃音のことをまっすぐに語る言葉に心が揺さぶられました。話を聞いているとその子の年齢を忘れてしまうくらい、子どもたちは自分の言葉でしっかりと語っていました。スタッフの打ち合わせの時に佐々木和子さんも言っていましたが、サマキャンの子どもたちの話を聞いていると「私がその域に達したのは大人になってずいぶん経ってからだったな」と思うことがよくあります。

 ウォークラリーではその日の夜から、今も下半身が痛くて普段の運動不足を痛感させられますが、大好きなプログラムのひとつです。急斜面の登りがきつくて苦しいですが、途中で見る見晴らしの良い景色や、頂上に着いた時の達成感、頂上で飲むジュースとおやつ、おしゃべりしながら山を降りる帰り道。同じグループの子どもたちと一緒に味わって、少し距離が近くなる感じがたまらなくうれしいです。

 お芝居では子どもの勇気にたくさん力をもらいました。なかなか配役が決まらなくて行き詰まりかけた時、初めてサマキャンに参加する子とお芝居が苦手で台詞の少ない役をしたいと言っていた子が小さな声で「僕、やってもいいよ」と言ってくれました。子どもたちはどもってなかなか出ないセリフも自分なりの「間」や工夫で乗り切っていて、本番は立派に演じていてかっこよかったです。
 
 子どものお芝居の本番を見るのは、最終日のとっておきのご褒美という感じです。ダブルキャストやトリプルキャスト、アドリブも加わり見応えがあります。子どもたちがどもりながら一生懸命にセリフを言う姿にはグッときます。「演じる人も、見ている人も、お芝居をいいものにしようという気持ちがあるから、とても楽しかった」と、お芝居の感想を言った子どもがいました。本質的な部分をキャッチする感性が素敵だなあと思いました。

 振り返りの時、山形市から初参加されたことばの教室の先生が、「めんこい!子どもたちがかわいくて、みんな山形に連れて帰りたい!」と言っていましたが、サマキャンの子どもたちが愛おしいと思う気持ち、私も同感!です。

 プログラム最後に読まれた、小3の妹の作文が感動的でした。卒業式でお兄ちゃんがどうだったか心配し、その後の両親との会話でお兄ちゃんが無事に卒業式を終えたことを知りホッとしたこと。最後の「世界で一番優しいお兄ちゃん」の一文を聞いた時、涙腺が大決壊しました。彼女が初めてキャンプに参加したのは小学校入学前だったと思うのですが、お芝居が大好きで、お姫様や王様などの役はいつもやりたいと手を挙げていました。おととしだったか、高3の男の子と主役がかぶり、最後まで二人とも譲らなくてダブルキャストになったことが印象的でした。彼女がどもるお兄ちゃんのことを見つめていたんだなあと思うと胸がいっぱいになります。兄弟も含めて家族全員で参加できるサマキャンの良さをしみじみと感じます。

 夢に向かって一生懸命努力している話、自分の意思でどもりを伝えたという話、スポーツや趣味に打ち込んでいる話など、いろんな話を聞いてサマキャンから帰ってくると「あの子たちは本当にすごいな。私もがんばろう!!!」と思います。サマキャンに参加している子どもたちのことを心から尊敬します。サマキャンを知った今、サマキャンの三日間で充電するエネルギーは、1年でいちばん大きいかもしれません。

 一年一年、サマキャンが開催できることのありがたさを痛感します。今年は特に夏の伊藤さんの過密スケジュールで、体調が心配だったのと、溝口さんも例年以上に大変そうで、そんな中、開催いただけたことが本当にありがたいです。伊藤さんと溝口さんの負担が軽くなるように、私たちができることはどんどん振っていただけたらと思います。
今年もサマキャン、本当にありがとうございました。
 大阪スタタリングプロジェクト 藤岡 千恵

 日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2016年8月27日