2014年 大阪吃音教室忘年会


今年も32名が参加した忘年会が終わりました。ひとりひとりの人生の語り、ひとことひとこと、丁寧に語る物語を聞き、とても幸せな気持ちになりました。僕たちの忘年会は特別です。40分ほど食事、飲んだ後は、ひとりひとりがスピーチをします。それをみんなは、真剣に聞き、ヤジを飛ばしたり、質問したり、感想やコメントをしたり、時に議論になります。
 
 一年一年、その人なりの成長が、変化が、このような語る場があることで、みんなで共有できます。他の忘年会では、絶対に考えられない、至福の時間です。今年も、元気で忘年会が迎えられてよかったと、何人も、この忘年会を大切にしていることがよくわかりました。一年一年を大切に生きていきたいと、みんなで確認できる、僕たちにとっては大切な時間です。

 6時から始まり終わったのが10時30分。4時間半とは、とんでもない時間です。それでも飽きることなく、だれることなくみんなの話に集中が出来るのは、自分のことば、真実のことば、自分が今、本当に話したいことを、みんなが話しているからでしょう。

 吃音の世界は、一気に50年前、僕が言友会をつくった当時に逆戻りしてしまいました。当時、当事者だけだったのが、どもる当事者と、研究者、言語聴覚士がひとつの方向へ向き始めました。僕の50年近い「吃音と共に生きる」の取り組みは、何だったのだろうと、むなしさや悲しさなど、いろんな感情が湧いてきます。

 しかし、忘年会に集まり、大阪吃音教室に出会い、「吃音を治す、改善する」ではなく、「て゜はなくったことで、人生に新しい展望が開けたという人たちの話を聞いて、絶望ばかりもしていられない、自分のできる限りのことはしたい、しなければならないと思いました。

 32名の人が語る人生は、明るく、楽しいものばかりではありません。職場での苦労や、学校生活の中での黒労が話されたり、その中で、サバイバルしているもしなやかさも感じられます。この人が、こんなことを考え、具体的にこんな行動を起こそうとしている。拍手もわき上がります。

 それぞれの人が、忘年会で何を話そうかと、ノートに書いてきたりするのをみると、まじめなひとたちだとつくづく思います。つらいこと、苦しいことも、仲間がいるからがんばれると、多くの人が話しました。どもりながら、どもりながら、自分の人生をかたる若い人たちの姿をみて、「どもらずに、流暢に話す」が、いかに薄っぺらいものかと思えます。丁寧に、間を置いて話すことばに、つい聞き入ってしまいます。
 忘年会を大切にし、笑い、楽しい時間をみんなで喜び合える。互いが、勇気や元気をもらう忘年会です。

 大阪吃音教室は基本的に毎週金曜日に開かれますが、皆出席が3人いて、プレゼントが渡されたり、一番出席者の多かった講座は何か考えたりする時、毎週の大阪吃音教室をふりかえることになります。この3つがベスト3でした。

 ・職場での吃音を考える
 ・ボイス・トレーニング
 ・仏教思想に学ぶ吃音
 

 仲間の藤岡さんからメールがきました。
 今年も忘年会の開催をありがとうございました。
 スピーチもゆったりペースで、4時間半の忘年会となりましたね。あれだけの時間を過ごせること、カフェグッドディズのスタッフの皆さまに感謝です。もし閉店の時間がなければ、まだまだ続いていたでしょうね。大好きな仲間と豊かな時間が過ごせること、幸せです。

 私は年々、どもり方が派手になってきて(笑)、「こんなにどもって大丈夫かな」(伝わっているのかな、聞き苦しくないかな)と思うこともありますが、それ以上にみなさんからの「そのままでいいよ!」というメッセージをたくさんもらって、のびのびといられる自分がいます。仲間がいるからどもれる、本当に感謝です。

 素敵なプレゼントをありがとうございました。他の人が見過ごすような部分を見てくれる仲間の優しいまなざしを感じます。坂本さんへの「坂本ですが」のマンガを見つけられたのも面白いですね。
 今年もみなさんとたくさんの時間を過ごして本当に楽しい1年でした。少し早いですが、良いお年を。
                                                       藤岡千恵

日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2014/12/17

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