2014年 第20回吃音ショートコース 2014年10月11日〜13日


 大型台風が直撃する中、明日から秋に毎年開いている、吃音ショートコースと名付けた、2泊3日のワークショップです。
 沖縄から参加予定の言語聴覚士養成専門学校の教員と、学生が、飛行機の欠航のために参加出来なくなりました。沖永良部島からの参加のことばの教室の教員は、前日に出発したために、さんかできましたが、楽しみにしていただけにとても残念です。

 今年で20回目です。体験学習のワークショップにこだわった2泊3日の合宿が、20回も続くとは軌跡に近いと思います。資料集にこんな文章を書きました。

  

  ナラティヴ・アプローチ
          
            ようこそ吃音ショートコースへ
                                     日本吃音臨床研究会  伊藤伸二   

 吃音ショートコースは、今年で20回になりました。
 ワークショップ形式にこだわった吃音ショートコース、講師として来ていただく人にお願いするのが大変でした。講演だけなら、たくさんの候補は挙げられますが、2泊3日のワークショップとして関わって下さるとなると、講師もテーマも、そんなに簡単なことではありません。その難しいことを、よく20回も続けてこられた、これは奇蹟に近い、と感慨深いものがあります。
 
 どもる人のセルフヘルプグループであるNPO法人・大阪スタタリングプロジェクトの仲間と、日本吃音臨床研究会につながる、ことばの教室の教師や言語聴覚士との共同の取り組みのひとつとして取り組まれたのが、この吃音ショートコースです。いろいろな分野の第一人者が、私たちの吃音の取り組みに共感し、忙しいスケジュールをやりくりしながら、3日間つきあって下さっただけでなく、とても力を入れて誠実に関わって下さったからこそ、年報として18冊の冊子にまとめられましたし、その内の4冊は、金子書房の書籍として出版されたのです。それは、私たちの大きな財産になっています。改めて、ありがたい出会いが実現したと心から感謝の気持ちが湧いてきます。

 将棋のことはまったく知りませんので、比喩が的を得ているかどうかは分かりませんが、「詰め将棋」が、相手の王将に向かって、一手一手と詰め進んでいくように、「吃音とともに豊かに生きる」という吃音の王将に向かって、正面から一手一手と進んでいった20年の歴史だったと思います。日本の、世界の、吃音の取り組みが、100年以上失敗を繰り返し、それでも方向転換できない中で、私たちだけが独自の路線を歩み続けることができたのは、志を同じくする大勢の仲間の支えと、私たちの方向性の正しさを強調して下さった、大勢の講師の方々のおかげです。幸せな20年でした。

 さて、今回のナラティヴ・アプローチは、これまで吃音ショートコースで学んできたことを整理し、発展させる集大成のようになると私は考えています。私の1965年からの吃音の旅は、ナラティヴ・アプローチで整理することができますし、今後の指針も示してくれるものになると確信しています。講師として、私たちがワークショップにこだわった中で、ナラティヴ・アプローチを学ぶ、一番ふさわしい人に来ていただくことができました。一昨年運良く東京で国重浩一さんと少しですが、お話しする機会がもてました。初対面にもかかわらず、古くから私たちを見ていて下さってきたような印象をもちました。その時から、今回のようなワークショップで来ていただくことを願っていました。

 遠く、ニュージーランドから、私たちの日程に合わせて来て下さいますが、事前の連絡で、吃音について、私たちの活動について強い関心をもって下さっていることが、ひしひしと伝わってきました。20回記念の吃音ショートコースに、国重浩一さんをお迎えできること、私たちの20年の活動へのご褒美のような気がします。
 その大切な吃音ショートコースに皆さんとご一緒できる幸せに感謝します。

 日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2014/10/10