すばらしい仲間と共にの25年

 沖縄や鹿児島、四国、近畿地方、茨城、千葉などの関東地方から140名が参加しての、吃音親子サマーキャンプが無事終了しました。25年前に京都児童福祉センターの言語聴覚士のみなさんと始めたときは、まさか、ここまで続くとは想像も出来ませんでした。本当にいろんなことが25年の間にはありました。

 もうこれでキャンプは終わりだと、思った出来事が一度や二度はありました。それも結局は結果はよくてよかったのですが、ひやひやした思い出もいくつかあります。
 たくさんの子ども、たくさんの保護者、たくさんのことばの教室の先生、言語聴覚士、参加した、一人一人が作り上げてきた25年の歴史です。

 まだ、記憶があるうちに25年の歴史をまとめてみたい気持ちになりました。
 親のパーホーマンス、子どもたちの劇の上演の後、ちょつとした25回のセレモニーをした時です。25回皆勤賞の賞状をつくりました。私を含めて3人です。NPO法人スタタリングプロジェクトの会長・東野晃之さん、豊中市で定年までことばの教室の教師として働いていた、松本進さん。25回連続とは、大変です。体調や、仕事など都合が悪くなる時だってあります。全てに最優先して、このキャンプを考えていなければ,実現しないでしょう。この二人がいてくれたから、そして、24回の溝口稚佳子さんたちがいてくれたから、ここまで続けられたのだと思います。

 特別功労賞として、渡辺貴裕さんの賞状を渡そうと読み始めたときです。
 6人の高校生の卒業証書の時は、涙がにじむ程度だったのですが、渡辺さんの顔をまずみて読み始めたとき、ほんの短い時間のはずなのに、超高速でいろんなことが巡り、涙があふれてきました。

 渡辺さんは京都大学の学生のときから、大学院、私立大学の教員になり、現在は東京学芸大学大学院の准教授として超多忙にもかかわらず、東京から参加して下さっています。

 なぜ、特別功労賞なのか。僕たちのキャンプのふたつの柱が、「吃音と向き合い、吃音を語る」話し合いと、「自分のことばに向き合い。他者と向き合う」劇の上演です。
 竹内敏晴さんが、キャンプのために脚本をつくり、合宿で演出し、その劇をキャンプの3日間で仕上げて、最終日に上演します。ずっとキャンプにかかわって下さっていた、竹内敏晴さんが、2009年9月7日亡くなりました。この年のキャンプの脚本を、病床の中で書き上げ、7月には合宿で演出・指導をして下さいました。

 竹内敏晴さんの役割は、僕たちではとてもできません。来年から、どうしようかと困っていたときに、渡辺さんが、私が引き継ぎますと言って下さいました。渡辺さんの専門は教育学で、教育の中に演劇を取り入れているので、お仕事とは関係のあることなのですが、まさか、引き継いで下さるとは思いませんでした。
 竹内さんの脚本をもとに、合宿で僕たちを演出指導して下さいますが、竹内さん以上に、子どもとどう遊んで、声をだして、劇を作り上げるかは丁寧です。子どもへの指導がとてもやりやすくなりました。

  「吃音に何の関係のないあなたが・・・・・・」
 と渡辺さんの顔をみてから賞状を読み上げ始めたとき、竹内敏晴さんのこと、吃音と何の関係のない人が、ずっとキャンプに関わって下さっていることに、大勢のスタッフが、心をひとつにキャンプに取り組み、25回を迎えられたことに、感謝の思いの涙があふれてきたのです。

 25回のセレモニーの時、25年のキャンプのまとめをしたいと、改めて強く思ったのです。

 日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2014/08/28