沖縄の夜は熱かった

 100人以上の人が集まってくださった「吃音講演会」。4時間思い切り話している最中、皆さんが本当に真剣に聞いてくださっているのがよくわかりました。僕は小さな講演でも小さな講演でも、できるだけ一人一人の顔を見て話すことを心がけています。うなずいて聞いてくださっているのがわかり、こちらも話に熱が入ります。
 私は講演や講義の前に必ずこう伝えます。

 「僕の考えは、きわめて少数派です。これまでと違う考え方に戸惑ったり、反発を覚えたりすることがあるでしょう。すべてに同感していただく必要はありませんが、こんな考え方も、吃音の場合できるのか」と頭の片隅にでもおいておいていただくとありがたいです」

 全難言鹿児島大会の講演の感想に、180 度考え方が変わったと言ってくださる人もいました。そこまで行かなくても、少なくとも、興味をもって、共感して聞いてくださっているのが伝わってきました。だから15 の休憩時間にたくさん質問用紙に書いてくださってのでしょう。その質問について答えていくのが僕にとって幸せな時間なのです。

 興奮のままに、懇親会にゆくと沖縄の言語聴覚士のみなさんがこんなに集まってくださいました。用があって講演を聞けなかった人もいたので、いろいろと質問をしていただいて、いろんな話をしました。その中で、沖縄の吃音に着いての取り組みの様子も聞けました。

 アメリカの言語聴覚士の96パーセントもの人が吃音の臨床に苦手意識をもつているそうです。カナダの60人もの言語聴覚士のいる病院でも、吃音に取り組む人は4人程度しかいなかったと、カナダで3年間働いていた、池上久美子さんが報告してくださいましたが、それはヨーロッパでも同じでした。
 沖縄にはことばの教室がたくさんあって、学童期の子どもはそこで吃音について勉強をしていますが、幼児の場合相談してもてきとうなアドバイスが、必ずしもなされていないということでした。そこで、懇親会に集まってくださった方々に、アメリカやカナダの言語聴覚士が吃音に苦手意識をもつのは、「治す、軽減」してあげなくてはならないと考えるからで、吃音を学び、吃音ともに豊かにいきることを目指せば、自然に消える吃音は消えていくし、きえない吃音は、うまくつきあうことを一緒に勉強していけばいいので、是非、苦手意識はもたないで、どもる子どもとその保護者のいい味方、仲間になってほしいとお願いしました。なんとかがんばってくださると確信しました。

 最後の写真の右端の人が、専門学校の講義を私にさせてくださり、今回の講演会を企画してくださった、沖縄リハビリ学院の教員の平良和さんです。この人が中心になって、沖縄に吃音のいい取り組みが広がればと、心から願っているのです。男性は鹿児島のことばの教師の僕の仲間の溝上さん。鹿児島と沖縄は比較的近いので、連携しながら取り組んでいただきたいなあと、願っているのです。

 うれしい、楽しい3時間30分があっという間に過ぎました。

 日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2013/12/22



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