どもる子どもたちは、すごい


今年11回となったキャンプで、これまでのプログラムになかったのは、グループに分かれての話し合いでした。 まず、僕が30分ほど話して、そのあと,同年代の子ども4人ほどとスタッフが進行しての話し合いをするというものです。
さて、30分で何を話すか。島根スタタリングフォーラムでは、親子・スタッフ全員の前で私が話をします。英国王のスピーチの解説や、劣等感、劣等コンプレックスについて話したりしてきましたが、今回、岡山で初めての試みです。私の話を受けて、その後子どもたちが話し合う形になっています。あれこれと考えましたが、24回続けている滋賀の吃音親子サマーキャンプで合った子どもの話をすることにしました。
まず、NO法人全国ことばを育む会が発行して下さった「吃音とともに豊かに生きる」(400円)にも紹介した、2011年3月11日の大津波でなくなった、安倍莉菜さんの話をしました。彼女のことはこのブログでも紹介しています。そして、今年の吃音親子サマーキャンプに参加した6年生の子どもの、感想文を紹介しました。
「話し合いの中で、ある子がいった、どもりは人口の1パーセントいて僕たちは選ばれた人なんだと思えばいいと言ったことが、心に残りました」
このような、キャンプで会った子どもの話や、作文を、みんな真剣に私の話を聞いてくれました。
僕が話した後、何か質問はありませんかと尋ねると、すぐに小学1年生の女の子が手をあげて、「どもりは治りますか」と質問しました。
「ウーン・・」、としばらく間を置いて、
「あなたは、どもりを治したいんだね。あなたにとって、治るとはどういうふうになることを、治ったと思うの?」
と尋ねました。尋ね返されて女の子はとまどい、すぐには答えられません。ここから、その場の雰囲気が一変しました。私の得意とするところです。「どもりの白熱教室」に変わりました。
手を挙げたり、私が指名したりしながら「どもりが治るとは」についてどんどん話が展開していきます。とても、テンポのある、話し合いが展開していきました
「どもらないで話せるようになること」
「つまらずに話せること」
「それは、いつでも、どこでも、どもらない友だちのように話せるということ?」
と展開していきます。すると、4年生の男の子が、
「どもっていても、悩まない、気にしなくなること」 と言い始め、
「僕は、今こうしてどもっているけれど、悩むことも、困ることもないから、伊藤伸二は治ったことになるのかなあ?}と言うと、そうだといいます。みんなも、その考えに賛成のようでした。
「どもりは絶対治らない、治ったとおもっても必ず再発する」
こう言った4年生は、どもりのメリット、デメリットを考えればいい。どもるメリトがあると言い始め、みんなはその子どもの言う言葉に注目しました。
「どもるとからかわれたり、いじめられたりするけれど、そのことにメリットはあるの?」
「そうされることは、自分の心を強くするのに役立つ」
なかなかのものです。ダメリットを瞬間的にメリットに変えていく、この4年生の男の子に脱帽です。白熱教室をもっとつづけたかったのですが、その後の話し合いの時間があるので、ある程度で終わりましたが、岡山の子どもたちは、10年のキャンプの精神をしっかりと受け継いでいるとうれしくなりました。
後日送られてきた感想分には、この時の話し合いのこと、私が話した二人の子どものことが書いてあり、実際に出会ったこどもの話や作文は、子どもたちに、吃音について真剣に考えるきっかけになるのだと思いました。
機会があれば作文を紹介したいですが、こんなうれしい感想がありました。
「伊藤さんは、すごいと思いました。きつ音のことをぜんぜん気にしていないし、とても、楽しそうにしゃべっているからです。わたしは、どもりながらしゃべっていて少しほっとしたかなあと思いました。グループの話し合いは、自分の思っていることをいっぱいうちあけました。ことばの教室でも言っているんだけど、吃音のひとどうしで聞いてもらうとなにかちがうなあと思います。
二日間本当に楽しかったです。わたしも、伊藤さんみたいな人になりたいと思いました」
うれしいですね。僕は以前よりもどもるようになって、本当によかったと思いました。ぼくたち大人が、どもることをコントロールするのではなく、自然にどもりながら楽しく話していくことが、子どもたちに勇気をあたえるのだと、うれしくなりました。
さて、今週末は静岡のキャンプ12回目か13回か。これも続いています。ところが、強い台風が来ています。中止になるかどうかは、金曜日のご午前中に決まります。
もし、中止になると、これまでたくさんのキャンプをしてきていて初めてです。なんとか、進路がそれてくれればいいのですが。
日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2013/10/24 台風を心配しつつ