今更、音読なんてしなくていい
2年前、認知療法の第一人者大野裕先生と共著の、「認知療法・認知行動療法 吃音とのつきあいを通して」(金子書房)を出版しました。今、北海道浦河のべてるの家の向谷地生良さんとの共著「吃音の当事者研究」の本の校正に追われていて、ブログの更新がなかなかできません。
オランダの世界大会のことも書きたいことがたくさんあるのて、ぼちぼち書きますが、今日は、昨日の大阪吃音教室の「認知行動療法」の講座の報告です。
オランダ大会や沖縄行きなどで、大阪吃音教室は1か月以上参加できませんでした。久しぶりに参加した吃音教室、やはりわたしにとっては、ホームグラウンド。うれしいものです。私にとっては新しい人もいて、新鮮でした。
今日のテーマの認知行動療法の担当は正原さん。3月に年間スケジュールを決めるときに、私が担当しますと手を上げのは、よく知っているからではなく、講座を担当することで、勉強ができるからで、皆さんに助けてもらいながら進めますと、前置きして講座が始まりました。
これが大阪吃音教室のすばらしいところです。得意なこと、よく知っていることでなくても、挑戦する。時には、しどろもどろになるときもあります。それをみんなで支えながら作り上げていく。講座担当の一人に責任を負わせるのではなく、みんなが責任をもつ。だから、新しく世話人になった人も、難しいと思える講座も担当出来るのです。
正原さんは、介護の仕事をしている忙しい中で、3冊の本を読み、手作りの小道具も作っていました。その熱心さにまず、敬意があつまります。
認知行動療法の基本的な説明があった後、9つの認知のゆがみを、吃音に関連づけて確認した後、一人一人の参加者が9つの認知の歪みの中で、自分は何が一番多いか、体験を通して話します。一人一人が自分の体験を語る、いい時間でする。その後、今悩んでいることを、今回で3回目の参加という、私は初めての女性が自分の問題を出して、みんなで考えていきました。
状況、気分、自動思考、根拠、反証、代わりとなる考え、気分の変化の7つのコロム表の作成です。
状況は これまで吃音に困りながらもなんとか、楽しく生きてきたが、職業訓練校でデザインの勉強に言っているとき、教科書順番に読ませる、音読が必ずある。普段の会話はいろんな工夫であまり困らないが、20人の受講生一緒の教科書をもち、それを読んでいくのだから、言い換えなどはできない。まさか、社会人になって、音読をするなんて思わなかったから、どもって声が出ないとき、心拍数があがって、勉強に集中できないというのです。
憂鬱、不安、恐怖などの気分が70パーセントです。
自動思考と、その反証をみんなで考え、その人の気分は50パーセントに下がりました。
彼女は、柔軟で、強い人だと思いましたので、ゆがんだ認知を変えるだけでなく、状況そのものを変えることができると、私は提案しました。職業訓練校で、それもデザインの講座で、音読で悩むなんてばかげています。損です。その講師がつまらない講義しか出来ない人なのです。そのために、自分が気分が落ち込んだりするのは、とても損です。
・ 私はどもるので、音読ができないと講師に話して飛ばしてもらう。
・ すごくどもって、講師をが「君はもういい」と言わせるようにする。
デザインの勉強をしに行っているという、本来の目的に照らせば、音読などする必要はないのです。
できないことはできないと、逃げるが勝ちです。一方で、その心臓がどきどきすることをしばらく経験して、耐性をを着けるのもひとつありだと、彼女は、後での喫茶店で話していました。
実際に逃げなくても、みんなの前で今困っていることを話し、「逃げる」という、これまで考えもしなかった選択肢をもったことで、彼女は楽になるだろうと思います。
さて、実際、何を選択したか、次に会ったとき聞くのがとても楽しみです。
オランダの世界大会で、世界各国のミーティングがどのようにされているのかを聞きました。すべてのグループが吃音についての体験を話し合うだけなのに比べ、一つのツール、技法を学習し、それを元に考えていくミーティングを続けているのは、大阪スタタリングプロジェクトの大阪吃音教室だけです。いい仲間のいる幸せを思いました。
日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2013/07/06