親との座談会 

 朝食後は2時間30分の親のみなさんとの座談会です。
 今年は参加者が多かったので丸くなるとこのようになりました。講演会で疑問に感じたこと、子育てで困っていること、将来への不安などが次から次へと途絶えることなく出されました。私は講演会よりも、このような形で、何でも自由に質問していただくことが大好きです。

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 たくさんの話題が出されて、最初は親から出されたことがらに、私が答えていくという、一問一答形式のようだったのですが、そのうち、お母さんや、お父さんもどんどん発言するようになり、親と子どものすばらしい関わりを聞くことができました。たくさんあった話題の中から一つだけ紹介します。

 子どもがかなり苦しそうにどもっている時、親としてどう聞けば良いか。これはいつも出されるテーマですが、前日の懇親会で、ちょうど小学3年生の親が3人私を囲んで話すかたちになりました。その時の話題が、座談会でも別の親から出されたので、みんなの共通のものとして話すことができました。

 これまで、いろんな相談機関などで「子どもか、いくらどもっていても、しっかりと最後まで聞いてあげて下さい」と言われて、子どもが苦しそうにどもっていても、内心はこちらも苦しくなっても、我慢して最後まで聞こうとしていたと前日の3人の親が口をそろえていいました。

 このようなことが未だにいわれているのです。子どもの話を最後までしっかり聞くは基本的には正しいのですが、本当にひどくどもって苦しそうな時も、じっと最後まで聞くのは、子どもはつらいです。
 言おうとしていることが親としてわかったら、「お母さんの想像では、何々がいいたいのかなあ」「何々なの?」手伝ってあければいいのです。声が出ないときは、あせってなかなか出ないものです。そのような状態になっても、親に何かを伝えたい、この気持ちがうれしいです。
 そうして「うん」と言えば当たっていたいたし、「違うよ」と言えば待てばいい。その時、ひと呼吸しているので、次は言えるかもしれません。

 「さっき、お母さんが想像して先回りしていったけれど、嫌だった? それともよかった?」
 このように、子どもに確認することが大事です。「分かっても言わないで、最後まで聞いて欲しい」と子どもが言えば、「ゴメンゴメン、これからは、どんなにどもっていても最後まで聞くからね」と言えばいい。子どもも、親もこの状況を共有していると、口に出さないで「つらいだろうなあ」と思いながら、我慢して聞くのとは違うだろうと思います。これまで経験したほとんどの場合は、子どもは、「分かっているなら言って欲しい」と言いました。

 子どもも困り、親もどうしていいか困っている。そんなときは、正直に、率直に、対等の立場で子どもに相談して、どうして欲しいか教えてもらえばいいのです。それは、吃音を否定し、どもってはいけないというこには結びつかないと思います。ひどくどもっている時は、子どもはしんどいのですから、この話し合いで、声がでないことを、しんどいことを親が分かってくれていることになります。

 多くの親は、この話で「そうか、分かっていたら言ってあげてもいいのか」とすごく安心します。「これをしてはいけません。こうすべきです」が、金科玉条のように例外なく信じられると、これらが、子どもも親もつらくしているのです。

 2時間30分はあっという間に過ぎました。いろいろと話すことはあるのですね。

 日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2012/11/28