講演会

  群馬のキャンプでは、私の講演会からスタートします。スタッフの一部と子どもはネイチャーゲームで楽しんでいる間に、講演会があります。保護者とスタッフ、そして講演会にだけ参加する人たちが、毎回大勢聴いて下さいます。今年は初参加の人が多かったので、自己紹介を兼ねて、私が吃音に悩み、そこから解放されていくプロセスをまず話しました。そして、今回のテーマの、ナラティブアプローチについて話を進めていきます。

 ナラティヴ・アプローチについて話すとき、映画「英国王のスピーチ」はとてもすばらしい教材になります。
 なぜ、あの開戦スピーチが成功したか。人それぞれの解釈があるとは思うのですが、これまで、大学や専門学校で講義の前に必ず、DVDを三手の見ての感想を2000字程度で書いてもらっています。150人ほどの感想を読みましたが、多くはライオネルとの信頼関係やこれまでの言語訓練で自信がついたからだと考えています。

 それも背景にはあるのですが、一番の成功要因は、40分ほど必死に原稿を読んでれんしゅうするものの、まったくうまくいきません。すぴーちまであと10秒ほどになったとき、ジョージ6世は「結果がどうであれ、ローグ、あなたがこれまで私にかかわってくれた、努力に感謝する」とローグに感謝してスピーチを始めます。このことばの中に、「どもる覚悟」ができたことがうかがえます。

 どもる時は、どもってもいい。この覚悟ができたからなんとか、とつとつとスピーチができたと私は解釈しました。これまで、そのような解釈をした人がいなかったのですが、吃音親子サマーキャンプの時の作文の時間に、小学5年生の女の子が、作文の最後の部分でこんなことを書いていました。

 「どもりを治そうと、がんばっても、結果はおなじだったけれど、ジョージ6世は、自分は自分や詞、どもってもいいやという気持ちがあったから、最後に話せたと思いますわたしやし、どもってもいいと思えたからスピーチできたのだと思いました。最後は感動して泣きました」

 すごいですね。小学生がここまで洞察したことに本当に驚き、私の解釈は独善的ではなかったと安心しました。ジョージ6世は「どもるだめな国王」から、「と゜もっても、責任感ある、誠実な国王」へとナラティヴを変えることができた、言語訓練の記録映画ではなく、ナラティヴ・アプローチのプロセスが映画で描かれていたと私は思うのです。

 そのような話を紹介しながら、吃音の本当の問題とは何か、治っていない事実、吃音否定の物語から、吃音肯定の物語に、吃音の臨床は変わっていかなくてはいけないと、子育てに絡めて話しました。
 みなさんがしっかり聴いて下さったことが、最後にいただいた感想文で分かりました。
 話を聞いて下さり、共感して下さる。こんな幸せなことはありません。
 群馬キャンプを継続して下さるスタッフのみなさんに感謝をしているのです。
 後、子どもたちとの話し合い、保護者の話し合いについては、次回。
 
 今日から、吃音ショートコースで、ゲシュタルトセラピーについて、吃音について、3日間、いい仲間と学び、考えます。そのワークシヨツプのことはまた後日。

 日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2012/11/23

 写真のトップは実行委員長の佐藤雅次さんです。この人のエネギーがキャンプを支えています。

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