昨日、香川県小児科医師会の研究会で講演をしてきました。
 今年の5月、全国医師会の研修会での私の講演を聞いて下さった方が、香川県でも話して欲しいと依頼を受けての講演です。これまで、北九州医師会、山口県医師会、尼崎市医師会で吃音の話をさせていただきました。小児科医師会のお医者さんが、吃音の話を聞いて下さるのはとてもありがたいことです。と言うのも、どもる子どものことが心配でまずお母さんが相談するのは、かかりつけの小児科の先生が多いと思うからです。
 ところが、何カ所かの小児科医師と話してわかっとは、どもる子どもの8割が自然治癒するという情報が行き渡っていて、「そのうちに自然に消えていくから心配しないで」という人が少なくないことです。自然治癒については、吃音の研究者の中でも8割という人もいれば、5割程度という人もあり、正確なところは分かりません。45パーセント程度がまあ妥当なところではないかと話しました。

 今回は。ナラティヴアプローチについて、英国王のスピーチに絡めて話しました。90分ほどみなさん真剣に耳を傾けて下さり、質問もして下さいました。また、私も吃音なので今日の話はよく分かりましたと言いに来て下さった方もいました。吃音については、まだ古い情報がそのまま使われているとの印象を持ちました。

 自然治癒について、不思議なことがあります。これまで吃音の発生率は1パーセントと言われてきました。そして、自然治癒は80パーセントともそれにあわせて言われてきました。しかし、この80パーセントはあまりにも多い数字だとは思っていましたが、最近アメリカでは、発生率は5パーセントど有症率が1パーセントとも言われるようになりました。とても奇妙な数字です。その発生率だと、80パーセントが自然治癒したことになります。自然治癒した後の治っていない人、つまり有症率1パーセントになります。そうすると、かつて、発生率が1パーセントと言われていたことを考えれば、どう考えればいいのでしょう。10年ほど前は1パーセントと言われていたのに、5パーセントに増えているのは、どういうことなのでしょう。首をかしげたくなります。

 いかに、数字というのはいいかげんなものかということなのでしょうか。自然治癒80パーセントと言われようが、45パーセントといわれようが、自分の子どもがどもり続けていれば、そんな数字は何の意味ももちません。
 数字でものを言うことは難しいとつくづく思います。
 とにかく、小児科の先生が、吃音について関心を持って下さったのは、とてもうれしいことでした。
 日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2012/10/15
2012年10月15日21時37分05秒0001