島根県難聴言語障害教育研究会の一日研修

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 昨年度に引き続き、島根スタタリングフォーラムの翌日。島根県全域から参加する、ことばの教室、難聴学級など支援教育関係者の一日研修会がありました。いろいろな障害のある子どもの教育に携わる教員ですが、その中のひとつである「吃音」に、一日使って研修して下さるのは、本当にありがたいことです。
 これまで、何度も島根県の教員研修の講師をさせていただいていますが、人事で今年新しくことばの教室を担当する人も少なくないために、毎年のように研修をして下さっています。もちろん、何度も私の話を聞いて下さる人も多いのですが。

 私は講演の時、落語のまくらのような話を必ずします。今回は、前日、浜田市のレストランで、「べてるの家」の向谷地良生さんに出会ったことを話して、「べてるの家」について知っているかどうか、アンケートをとりました。意外に知らない人が多いのには少し驚きました。そこで、「治せない、治さない・精神科医の川村敏明さん」「相談を受けるのではなく、当事者に相談する・ソーシャルワーカーの向谷地良生さん」の話をしつつ、「べてる家」の話を少しして、吃音についても、「吃音は治せない、治さない」私の考えを話しました。

 まだ、このブログで紹介していないのですが、カナダで3年間言語聴覚士として仕事をし、日本に帰ってきた池上久美子さんの「北米の吃音治療事情」は衝撃的でした。ここまでひどいとは思いませんでした。カナダでは、日本で100年以上も前の治療法を、ほとんどの人が失敗してきた治療法を未だに続けているのです。アメリカやカナダ、オーストラリアなどの現状を話し、今私の考えている吃音の取り組みを紹介しました。

 90分ほど話した後、今年4月からことばの教室の担当者になった人に、その話を受けてや、吃音について知りたいことなど質問していただいて、対談するという、私にとって初めての試みをしました。やはり、新しく担当した人の質問は新鮮で、話が弾みました。おかげで、90分の話の中では話せなかったことを補うことができました。
 
 午後からは、グループに分かれていただいて、「どもって生きる覚悟を決めて生きる」子どもを育てるためには、どのような情報、知識、体験が子どもにとって必要か、また、具体的にどのような教育ができるか、考えていただきました。「吃音は治せない、治さない」のであれば、ことばの教室では、何もしないのかと、誤解をする人がいるのですが、「治す・改善」の取り組みよりも、はるかにことばの教室で教育としてしなければならないことが多いのです。グループで話し合い、発表していただき、それに私が解説するというスタイルでした。

 一日の研修は、講演、対談、演習と、これまでにないスタイルにしましたが、最後の振り返りのみなさんの発言から、この新しい試みが成功したように私には感じられました。また、私の主張を多くの人が「ガッテン」して下さいました。毎年話させていただいている、島根県ならではの反応ですが、私にとって、とても充実した、ありがたい、うれしい研修会でした。

 日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2012/06/26