今年で3回目になった群馬でのキャンプ。キャンプ中に、私の講演会が組み込まれています。キャンプが始まると、子どもたちは、自然の中で野外活動をしますが、保護者やスタッフは講演会に参加します。この講演会はキャンプに参加しない人にも公開されていて、群馬だけでなく遠くからも参加して下さいます。今年は、東京都や千葉県の言語聴覚士が3人参加して下さるなど、キャンプ参加者よりもかなり多くなります。この3人はキャンプにも参加して下さいました。そして、これまで勉強してきた吃音と全く違うことに驚いておられました。そして、共感もして下さり、参加してよかったと感想を言って下さったので、また仲間が増えたとうれしくなりました。

 私は、立川志の輔の落語が大好きです。大阪に来たときはもちろん、わざわざ落語だけを聞きに、東京まで出かけます。NHKの「ためしてガッテン」のイメージとはまったく違う本格派です。志の輔はその日の演目に入る前の枕をとても大切にします。それがとてもおもしろいのです。それだけでも聞く価値があるほどおもしろいのです。

 志の輔の影響か、私も講演の時は必ず、今日は何を枕にしようか考えます。
通常は、最近に出会った、最も印象に残った、どもる子どもや大人の話であったり、社会の出来事でその後話に関係することを話すのですが、今回は「英国王のスピーチ」の話を枕にしました。「この中で、映画を見た人は何人いますか」と問いかけたところ、3人ほどしかあがりません。静岡のキャンプのスタッフへの講演の時は8割方の人が見ていました。事前に見ておいて欲しいとお願いしたこともあって、高い割合でした。今回の少なさには少し驚きましたが、考えれば仕方がない事情がありました。「英国王のスピーチ」がアカデミー賞をとって、これから映画館に多くの人が駆けつけてくれると思った矢先に、東日本大震災が起こったのですから。震災直後に行った東京では、上映館にポスターが貼られながら、上映はしていませんでした。

 見ていない人にどう伝えるか、逡巡しながらも「英国王のスピーチ」が吃音セラピーの成果によってスピーチができたのではなく、ジョージ6世に、王として語るべき言葉があり、責任があったことと、彼の誠実さ、まじめさ、責任感があのスピーチに結びついたのだと話しました。2時間30分ほどの講演ですが、みなさん真剣に聞いて下さいました。

 講演が終わって、アンケートが配られました。そして、私の本が販売されました。たくさんの方が買いに来て下さり、希望される方にサインをしました。その後回収されたアンケートを読んでとてもうれしくなりました。私自身があまりアンケートというものに詳しく感想を書くことがないからそう思うのかもしれませんが、簡単に書いて提出する人が多いように思っていました。ところが、多くの方が少しの時間しかない中で、感想を書いて下さっていました。あまりに丁寧に、しっかり書いて下さったのがうれしくて、紹介させていただきます。どもる子どもと共に歩んでこられたこれまでの親の道のりが表現されていたからです。
 また、何人もの方が「英国王のスピーチ」の話はおもしろく、是非行きたいと言って下さいました。また、子どもだけが宿泊して、夜、家に帰った保護者が、翌日迎えにきて、その夜にビデオを借りて「英国王のスピーチ」を見たと報告に来て下さったのにはびっくりしました。
 「英国王のスピーチ」については、今後ずっと話していかなくてはと思いました。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二

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2011年11月20日23時50分21秒0001