「赤城の山も今宵限りだ、かわいい子分のてめえたちとも、離ればなれになる門出だ・・」
 新国劇の島田正吾の国定忠治の舞台がいまだに浮かびます。映画少年、青年であった私は、歌舞伎、演劇も好きでした。これも父親の影響でしょう。歌舞伎や舞台の名セリフをよく口にしていました。

 その赤城山で今年も吃音キャンプが開かれました。群馬県の難聴言語障害教育・吃音部会から始まったこのキャンプが、独立した実行委員会形式で今年から開かれることになりました。集まりたい人が集まって、したいことをする。私のかかわる島根県、静岡県、岡山県の吃音キャンプもこうして回を重ねていきます。学童期・思春期と吃音に深く悩んだ私にとって、ことばの教室の先生方が、このようにどもる子どもや保護者のために、かなりのエネルギーを使ってキャンプをして下さることは、どもる子どもだった私のためにして下さっているようで、とてもありがたく、いつも感謝しているのです。
 その輪の中に私をずっと入れて下さっていること、とても幸せです。今年も幸せな2日間を、好きな赤城山で過ごすことができました。
 
 島根から始まり、滋賀、岡山、静岡と続く今年最終の吃音親子キャンプです。
 今回は群馬県内に限らず埼玉・栃木から子どもたちが参加し、病院勤務の言語聴覚士が、東京、千葉から参加して下さいました。このような広がりを見せるのは、実行委員会の熱意があるからでしょう。私も、私の吃音についての思想・理論が一人でも多くの人の耳に届くことを願っていますので、とてもうれしいことです。
 
 夜の部の子どものプログラムは昨年に続いて「どもりカルタ大会」。
 高学年の子どもと大人、低学年同士、大人同士、こんな三組の対戦をしたそうです。群馬の伝統でしょうか、今年も盛り上がったようです。

 翌日の午前中、私が保護者との話し合いをしている時は、「マジック教室」でした。マジックが趣味の教師が子どもに教え、最後のおわりの集いで、全員が披露しました。種はあるのだろうと分かっていても、「えっー、すごい」とみんなびっくりして見ています。観衆の素晴らしい反応に、子どもたちもきっと達成感をもてたことでしょう。
 披露するにはことばによる説明が必要です。言わなければならないことなので、子どもたちはどもりながら、一所懸命伝えようとしています。
 さすがに、ことばの教室の先生方です。昨年は一度もどもる声が聞けなかった子どもが、どもりながら、説明していました。人前でどもれるようになった子どもに、成長する姿をみる教師と過ごす子どもたちは幸せです。できるだけどもらないことがいいことだと考えられては、どもる私たちはしゃべれません。
 「来年も絶対に来る」という子どもの声が印象的でした。
 次回は、キャンプ前の私の講演会の報告をします。

 日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二