吃音に悩む英国王ジョージ6世が自らを克服し、国民に愛される本当の王になるまでを描いた感動の実話。


 2月4日、「英国王のスピーチ」の試写会に招待されて、観に行ってきました。吃音に関する映画は、ベネチァ映画祭で新人監督賞をとった「独立少年合唱団」など、期待をしていたものが、吃音という観点からすれば、これまで期待はずれに終わっていましたので、期待はしつつも、不安を抱いて見に行きました。
 欧米ではすでに公開され、アカデミー賞の主要12部門に、ノミネートされています。また、国際吃音連盟に所属するグループでは、絶賛され、大きな話題にはなっています。ただ、国際吃音連盟の仲間とは、私とは感覚がかなり違うので、欧米のどもる人のセルフヘルプグループが絶賛したとしても、同調できないかもしれないなあとは思っていました。

 配給会社の試写室には、新聞社、テレビ局などのマスコミ関係者が10数人ほどいたでしょうか。このような試写会は「独立少年合唱団」以来2回目です。
 すばらしい映画でした。

 幼い頃から吃音にコンプレックスをもち、自分を否定しながら生き、内気な性格から人前に出ることが最も苦手だった国王の次男が、「王冠を賭けた恋」のために王位を捨てた兄の代わりに、国王の座についたジョージ6世、現在の英国女王エリザベスの父の物語です。何人ものセラピストの治療を受けても改善しません。デモステネスの小石を口に含んで訓練したという話から、実際にビー玉を6こも口に入れて訓練するシーンが出てくるのにはおどろきました。オーストラリア人のセラピストに出会い訓練をするのですが、驚くことに、1936年のことなのに、現在とまったく変わらないセラピーなのです。よく、検証された映画だと思いました。見方を変えれば、吃音の治療法は1930年ころから、まったく進歩していないことになります。

 父からスピーチが出来ないことを激しく叱責され落ち込むジョージ。
 王位継承評議会のスピーチでどもり、その夜「私は王ではない」と泣き崩れるジョージ。
 吃音に悩む人の心理が状況が見事に描かれていきます。

 「ナチスドイツとの開戦直前、不安に揺れる国民は王の言葉を待ち望んでいた。王は国民の心をひとつにするために、世紀のスピーチに挑むのだが・・・」

 パンフレットにはこう書かれています。
 
 あまり説明や私の感想を書いてしまうと、これから映画を見る人の興味をそいでしまいまうことになるのでこの程度にします。

 もうひとつ、同じ時代を生きた吃音であったことで知られる、英国首相のチャーチルがどうでてくるのか、とても興味深いことでしたが、ちゃんとでてきました。よくみていないと見逃してしまいそうですが、私としては、とても重要な役割をしていました。
 
 吃る人本人だけでなく、どもる子どものおやにも、ことばの教室の担当者、言語聴覚士など、関係者には是非みてほしい映画です。

 2011年2月4日 日本吃音臨床研究会 伊藤伸二