子どもたちが、わくわくするキャンプ
2009年10月24・25日

 第8回静岡県親子わくわくキャンプが行われた東海大学三保研修館は、日本のほぼ中央に位置する静岡市清水区、有名な「三保の松原」にあります。ここからの富士山の眺めはすばらしいのですが、あいにくの曇天と雨で美しい眺めを見ることはできませんでした。しかし、子ども達のうれしい笑顔や、楽しい声にたくさん出会えました。
 
 どもる子どもだけを集めて行うこのキャンプ。今年で8回目。私は第1回からずっと参加しています。静岡のことばの教室の教員3人が、島根県のスタタリングフォーラムのキャンプの実践の資料を取り寄せ、自分たちも静岡でしたいと、話が盛り上がって、その時、その場から、私のところに、講師として来てもらえないかと電話をして下さったようです。私はすっかり忘れているのですが、もちろん、二つ返事で、喜んで参加しますとお受けしたのでしょう。それが、8年も続いたこと、とてもうれしいことでした。
 先週は、群馬でどもる子どものキャンプでしたが、島根、静岡、岡山が、ずっと継続して、どもる子どものために親子キャンプを継続して開いて下さっていることが、群馬にも広がったのでしょう。子ども達の笑顔に出会うと、このようなキャンプに一緒に加わらせていただいていることに、本当に幸せを感じます。

 3つのキャンプには、それぞれの特徴があります。
 静岡のキャンプの特徴はふたつあります。

 ひとつは、徹底して、子どもが喜び、楽しめることを企画することです。
 駿河湾の魚をで地引き網でとって、天ぷらにしたことがありました。カヌーで湾に出ました。大きな船を借り切って、ナイトクルージングを楽しみました。よくまあ、これだけ毎年、違ったことを計画するなあと、感心します。今年は、夜の水族館の見学でした。めったにできない体験に、親も子もスタッフも大喜びでした。夜と昼の水族館の違い、みどころを学芸員が最初に解説し、そして、借り切りの水族館の見学です。電気を消した中で光る魚、動きが違う魚、不思議な体験をしました。そして、最後に講堂に集まって、質問の時間です。びっくりしました。次から次へと子ども達が質問をしていきます。もちろん、吃りながら、物怖じすることなくどんどん手を挙げます。そして、その質疑内容をしっかり理解して、それを深める質問をしていくのです。的確な質問に驚きました。
このような体験と、講師にきてもらい、お土産になるものを親子で制作します。今年は万華鏡でした。ここまで、子どもの喜ぶこと、楽しいことを徹底追求する、スタッフの企画力、制作の講師の人選に、脱帽です。

 二つ目の特徴は、キャンプの始まる前に、スタッフの事前学習を持つことです。
 静岡はかなり広いので、会場がその真ん中にあるといっても、朝の9時頃から集まるのは大変です。そんな中で、朝の9時15分から、私の講義が始まりました。それは、キャンプのスタッフだけでなく、キャンプには参加できないけれど、私の講義は聞きたいという人にも公開されます。スタッフ以外に、今年も10人ほどが、私の吃音の講義を聞きにだけ参加して下さいました。これは、私にとってとてもありがたく、嬉しいことです。
 キャンプのスタッフである、ことばの教室の担当者が、吃音について、どのように指導すればいいか、ある程度の共通の認識をもってもらうことはありがたいことです。当然私も気合いが入ります。今年は、新しい本を作るためにいろいろと考えていることでもあり、吃音ショートコースでアドラー心理学を学んだ直後でもあったので、ライフサイクル論のエリクソンやアドラー心理学と、私の体験を絡めました。これまで、ずっと一貫して言ってきたことではありますが、ことばの教室で、どもる子どもに対して、どのような目標を立てて指導するか、私の考えを話しました。当然のことながら、今、どもる子どもに指導されていることで、十分にことばの教室は大きな役割を果たしているというのが前提です。それに、私はこのようなことも考えていただくとうれしいと、私の希望を話しました。あっという間の2時間15分でした。
 8年間も連続してこのような講義をしているのですから、当然基本的なことは変わりません。同じような話になるのは仕方がないことです。ところが、「伊藤さんの話は、年々進化していっている」や、「何度聞いても、体験を通しての話だから、胸に響く」「担当者である私たちが、そのままのあなたでいいと、励まされている」というような声を聞くと、脳天気な私は、素直に、とても嬉しいです。私自身、元気が出ます。
 だから、8年も話を聞いてくれる人がいて、私も8年も連続して話すことができるのです。ありがたいありがたい、仲間達です。機会があれば、夜の子ども達との話し合い、保護者向けの学習会での話や、個別相談などの話を紹介できればいいのですが。・・・
  
2009年10月25日    日本吃音臨床研究会 伊藤伸二