「スタタリング・ナウ」(1998.8.15 NO.48)で掲載していることば文学賞受賞作品を紹介します。選者の高橋徹さんのコメントつきです。

   
ことばよ
                          西村芳和
ことば ことば ことば
もし呪うことができるなら
僕はことばを呪いたい
映画『八ツ墓村』のように
頭にロウソクを突き刺し
桜並木を疾走して
ことばを
次から次へと
叩き斬ってしまいたい
尽きることなく押し寄せることばを
そして最後に
ことばの神を引っつかまえて
5寸釘で打ち付けてやりたい

その時ことばは
やっぱり断末魔の叫びを
ことばを使って発するのだろうか
そうだとすれば
僕はその断末魔の叫びのことばを
また生け捕りにして
またまた5寸釘で打ち付け
その断末魔の叫びのことばの
そのまた叫びのことばを
生け捕りにしなければならない
つまり終わりがない
もしかするとことばは
こうして何度も滅ぼされそうになりながら
生き続け繁殖し続けているのかもしれない

それにしてもことばよ
たまにはことばを使わず
その姿を顕してみせろ

そして
僕と勝負しろ

ことばよ
僕の前に現れ出るのがコワイのか
コワクないなら今すぐ出て来い

ことばよ
勝負だ

【高橋徹さんのコメント】
 「ことばよ」は、まずその発想、展開の仕方、ことばの使い方、構成、どれをとっても吃音者の問題を扱う詩としては出色の出来栄えでした。想像するに、どもりの問題をもっている方々は、それぞれことばに対してえも言えない気持ちを抱えていることでしょう。人間が音として発するだけのことばを、作者はポエジーという、詩的な考え方の中で、まるで不思議な独立して存在するものであるかのごとくイメージした。大層力強いものを感じました。ことばとの闘争心をもつ人、どもる人でないと、またときにはことばへの激しい憎しみがないと、こんな表現はできないと思いました。


日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2022/09/24