これまで、僕たちが発行しているニュースレターなどを通して、吃音親子サマーキャンプの意義や参加者の声を紹介してきました。これからしばらくは、僕がいくつかの学会や雑誌などで、吃音親子サマーキャンプについて書いているので、それを紹介します。
 まずはじめに、今日は、1997年に、人間性心理学研究誌に掲載された文章です。今日と明日、2回に分けて紹介します。今日は、気呂犬瓩法´競札襯侫悒襯廖Ε哀襦璽廚亮汰を紹介します。

そのままのあなたでいい
−セルフヘルプ・グループで学んだこと−

                日本吃音臨床研究会 伊藤伸二

人間性心理学研究第15巻第2号抜刷 1997年12月
日本人間性心理学会 〔特集:私たちの人間性心理学を問う〕
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 病気や障害があると、治したい、障害がなくなればと考えるだろう。病気や障害が日常生活を著しく生き辛くさせていれば尚のことである。しかし、現実には現代医学、科学の進歩をもってしても、解明できないことや治せないものは少なくない。治らないもの、治りにくいものに対して、人はどう向き合えばよいのか。
 近年、同じような悩みや生活上の困難を共有する人達が、様々なセルフヘルプ・グループをつくり、体験を分かち合い、自分らしく生きることを模索している。グループは、障害、病気、依存症や嗜癖、死別など、多種多様である。1960年代の日本に大きな流れとしてあった障害者団体、患者会とはかなり違う動きである。前者は施策要求の活動が主であり、組織そのものに焦点が当てられた。後者は、組織よりもメンバーひとりひとりの、互いの人間的な成長に焦点が当てられている。そして、グループの多くが、従来の病気や障害を治したり、悩ませている事柄をなくすという発想に対し、「そのままのあなたでいい」という新たな価値を生み出してきている。
 「あなたはどのような人間性心理学を実践しているか」の編集部からの問いかけに、筆者の言語障害者としての体験と、その後のセルフヘルプ・グループを通しての実践を振り返りたい。それが、AHPのCore Valuesの照合になればうれしい。

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 筆者は20歳すぎまで吃音に深く悩んだ。吃音を恥じ、隠し、話すことから逃げた。「吃音は治るはずだ」と専門機関で治療を受けた。吃音は治らなかったが、その機関で多くの吃音者と出会い、自分の悩みを話し、聞いてもらえる初めての経験をする。この喜びを、ひとりのものにしたくない。筆者は30数年前、吃音者のセルフヘルプ・グループを作った。世話人として活動する中で、自分自身が吃音の悩みから解放されていった。
 セルフヘルプ・グループに大勢の吃音者が集まり、体験を語り、その体験を整理していくと、これまで信じていたことが間違いであることに気づき始める。

ゝ媛擦慮彊は未だ解明されず、すべての吃音児・者に100%有効な治療法はない。
⊆N鼎鮗ける、受けないにかかわらず、治っていない吃音児・者は多い。
A瓦討竜媛纂圓悩んでいるのではない。明るく健康に自分らしく生きている吃音者は多い。吃音から受ける影響は、症状の程度によるよりもむしろその吃音をどう受け止めているかによる個人差が大きい。

 これらの事実が明らかになるにつれ、グループの活動に質的変化が起こる。「吃音を治す」から「吃音を克服する」へ、「吃音と上手につきあう」へと目標は変化した。吃音だけでなく、病気や障害や生き辛さを感じている人々は、それぞれのセルフヘルプ・グループの体験の中から、「そのままのあなたでいい」という価値観を育んでいる。治らないもの、治りにくいもの、個人の力ではどうしても解決できないものに対して、治したい、治そうとすることがいかにその人を生き辛くさせ、自分らしく生きることを阻んでいるか、多くのセルフヘルプ・グループの仲間たちは知っているからである。


日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2021/9/25